育種学研究
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コムギ品種「ゆめちから」における高活性型ポリフェノール酸化酵素とコムギ縞萎縮病抵抗性遺伝子間の強連鎖の解消と新規抵抗性母本の形質評価
小林 史典小島 久代石川 吾郎乙部 千雅子藤田 雅也中村 俊樹
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論文ID: 19J10

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抄録

北海道の超強力秋播きコムギ品種の「ゆめちから」は,コムギ縞萎縮病に対して高度な抵抗性を示し,抵抗性に関与するQTLのQ.Ymymを保有する.Q.Ymymは2D染色体長腕に座乗し,麺色に影響を与える高活性型のポリフェノール酸化酵素(PPO)遺伝子(Ppo-D1b)と強連鎖関係にある.そのため,罹病性品種へのQ.Ymymの導入にはPpo-D1bが伴い,麺の色相低下が問題となっている.本研究は,Ppo-D1bQ.Ymymの強連鎖を解消し,麺の色相が改善され且つコムギ縞萎縮病抵抗性を持つ系統の開発を目的とした.参照ゲノム配列情報を用いた物理地図と解析に用いたDNAマーカーの位置より,Ppo-D1Q.Ymymとの距離は約19.7 Mbであり,組換え型の取得が可能な距離と推定された.そこで,「ゆめちから」と罹病性品種の「タマイズミ」との連続戻し交雑系統から,Ppo-D1Q.Ymymとの間で遺伝的組換えが生じた個体のDNAマーカー選抜を行った結果,低活性型のPPO遺伝子(Ppo-D1a)とQ.Ymymを持つ系統(Ppo-D1a/Q.Ymym系統)が選抜できた.同系統はコムギ縞萎縮病汚染圃場(I型,III型)において明らかに抵抗性を示した.また,フェノール反応試験においても,Ppo-D1bを持つ系統に比べて低いPPO活性を示した.さらに中華麺色相評価では,Ppo-D1bを持つ系統に比べて色相の劣化が抑えられており,その差は明瞭であった.以上のことから,Ppo-D1a/Q.Ymym系統を母本に用いることでQ.Ymymの導入の際に懸念される品質面での問題点が解決できると期待される.また,同系統とこれまでに開発されたPpo-D1aおよびQ.Ymymの選抜マーカーを組合せることで,縞萎縮病抵抗性育種の効率化が図られる.

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© 2020 日本育種学会
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