育種学研究
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暖地・温暖地向けの米粉パンに適した多収水稲新品種「笑みたわわ」の育成
中西 愛田村 克徳片岡 知守佐藤 宏之田村 泰章坂井 真伏見 力竹内 善信
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論文ID: 22J04

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抄録

「笑みたわわ」は晩生の製パン適性が優れる多収水稲品種「ミズホチカラ」を早生化した多収品種を育成することを目標とし,「金南風」の胚乳蛋白質突然変異系統「PMF84」と「モミロマン」のF1を母本,「ミズホチカラ」を父本とする三系交雑後代から育成された品種である.育成地(福岡県筑後市)における「笑みたわわ」の出穂期は「ヒノヒカリ」と同程度で「ミズホチカラ」より7日早い.成熟期は「ヒノヒカリ」より8日遅く,「ミズホチカラ」より10日早い.稈長は「ヒノヒカリ」より3 cm程度高く,穂長は4 cm長く,穂数は少ない“穂重型”の草型である.耐倒伏性は「ヒノヒカリ」より強い“強”である.収量は「ヒノヒカリ」を40%以上上回り,「ミズホチカラ」と同程度である.葉いもち圃場抵抗性は“弱”,縞葉枯病に“罹病性”,白葉枯病抵抗性は“弱”,穂発芽性は“やや難”,4-HPPD阻害型除草剤成分に対して“感受性”である.関東および九州地域での奨励品種決定調査において出穂期および成熟期は「ミズホチカラ」より早く,収量は同等もしくは上回った.「笑みたわわ」の米粉を使用した100%米粉パンの膨らみは「ミズホチカラ」と同程度で,製パン適性が優れることが示唆された.その要因として「笑みたわわ」の白米中のアミロース含有率が適度に高いこと(21.3%),製粉時の損傷デンプンが少ないこと(1.7%)および米粉粒径が小さいことが関連すると考えられる.以上より「笑みたわわ」は関東以西の地域で米粉用品種としての普及が期待される.

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