育種学研究
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ゲノムワイドマーカー選抜による高温登熟性といもち病抵抗性を兼ね備えた水稲早生品種「なついろ」の高速育成
松本 憲悟山川 智大大野 鉄平太田 雄也安藤 露山内 歌子米丸 淳一田中 淳一
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論文ID: 22J10

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抄録

我が国の稲作経営においては,生産コストおよび環境負荷を低減しつつ高値販売が安定して実現できるイネ品種が求められている.高温登熟性と病害抵抗性を兼ね備え,稲作経営からのニーズに応えることができる早生品種は,現状ではまだ少ない.「なついろ」は,早生で高温登熟性に優れる「三重23号」の遺伝背景に,「ともほなみ」由来のいもち病圃場抵抗性遺伝子pi21を短期間で導入することにより育成された.連続戻し交雑では,BC1F1からBC3F1の各世代において,pi21を対象としたDNAマーカー選抜に加えゲノムワイドマーカーを用いた背景選抜を実施することにより,最初の人工交配(2013年)から2年2ヶ月で目的の遺伝子型を実現し,その後系統選抜および生産力検定試験等の特性把握調査の後に,6年後の2019年に品種登録出願された.「なついろ」は「三重23号」と比較して,いもち病圃場抵抗性が強いこと,稈長と穂長がやや長いこと,千粒重がやや小さいこと以外は概ね同様の農業形質を有する.また,「コシヒカリ」と比較して,稈長は10 cm短く,穂数はやや少なく,草型は“中間型”である.出穂期,成熟期は「コシヒカリ」よりそれぞれ3日および5日早い.pi21を有し,葉いもち圃場抵抗性は“極強”である.高温登熟性は「三重23号」と同程度の“強”で,「コシヒカリ」より強い.「なついろ」は2020年に三重県の奨励品種として採用された.高温登熟性と病害抵抗性を兼ね備え,稲作経営からのニーズに応えることができる早生品種としての普及が期待される.

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