論文ID: 24J14
サツマイモ(Ipomoea batatas (L.) Lam.)の栽培が盛んな南九州では,近年,サツマイモ基腐病(以下,基腐病)による深刻な被害が生じている.基腐病は日本では2018年に初めて確認された病害であるため,日本で栽培されている品種の本病に対する抵抗性についての知見はない.そこで,本研究では2020年および2021年の2年間,基腐病の発生が激しい圃場で47の品種(主要15品種,参考32品種)を栽培し,抵抗性を評価した.5月上旬の植え付けから10月上旬の収穫まで,暗褐色~黒色に変色した茎の病変部の位置および病変長を継時的に計測し,茎葉発病度,基部発病株率,枯死株率,収穫時には塊根発病度,発病塊根重率,塊根収量を調査した.植え付け後,約2カ月前後から発病が認められ,生育期間が長くなるに従って発病は進み,主要な15品種間には,茎葉発病度,基部発病株率に有意な品種間差が認められた(p < 0.05).また,茎葉発病度と基部発病株率の間には高い相関が認められ,基部発病株率を指標として茎葉の抵抗性の評価が可能であることが明らかとなった.塊根発病度および発病塊根重率にも有意な品種間差が認められ,品種間の収量差も顕著に現れ,地上部の発病が塊根収量に大きく影響することが明確となった.そこで,茎葉発病度および基部発病株率を重視した上で,塊根の発病程度や収量を勘案して主要15品種の抵抗性程度を評価し,参考32品種については基部発病株率から抵抗性程度を評価した.また,これらの結果に基づき,当面は,「ダイチノユメ」を“弱”,「高系14号」を“やや弱”,「アヤムラサキ」を“中”,「こないしん」と「べにまさり」を“やや強”,「タマアカネ」を“強”の指標品種にすることにした.本研究で得られた抵抗性の情報が今後の基腐病対策や抵抗性品種の育成に寄与することを期待する.