論文ID: 24J15
日本初のデュラムコムギ(Triticum turgidum ssp. durum (Desf.) Husn.)品種「セトデュール」はデュラムコムギの中では早生品種であるが,パンコムギに比べて穂発芽や赤かび病に弱いという欠点がある.そのため梅雨入り後の降雨に遭遇する前に収穫する必要があり,栽培適地は生育期間を通じて比較的降雨の少ない瀬戸内地域に限定されている.また,パスタの色や食感など,品質面でも改良すべき点がある.これらの改善に向けて育種選抜を進め,加工適性に優れるデュラムコムギ新品種「セトデュールR5」を育成した.「セトデュールR5」は「Mv-Pennedur」/「セトデュール」*2の組み合わせから派生系統育種法により育成し,2024年2月に品種登録出願公表された.「セトデュールR5」は「セトデュール」と同等の早生性および栽培性を有していた.収量は「セトデュール」より約1割少ないが原麦の蛋白質含有率が約1%高かった.穂発芽耐性,赤かび病抵抗性はそれぞれ“やや易”,“やや弱”で,「セトデュール」より向上していた.小麦粉の黄色色素量,パスタ加工後の乾麺および茹で麺の黄色味(b*値)は「セトデュール」より高かった.「セトデュールR5」の高分子量グルテニンの組成はGlu-A1cおよびGlu-B1hで低分子量グルテニンはLMW-2であり,茹で麺の破断強度が高く,「セトデュール」よりパスタ加工適性に優れていた.以上より「セトデュールR5」は「セトデュール」の後継品種として普及が期待される.