育種学研究
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コムギ1粒の胚乳断面色の測定による粉色の評価法の開発
小綿 美環子渡辺 満中村 信吾佐藤 暁子
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1999 年 1 巻 3 号 p. 149-156

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抄録
コムギ種子の胚乳断面色を測定することにより, ふすまの混入による影響を除いた粉色の評価法を検討した. コムギ種子を2mmの厚さの輪切りにし, 外周の皮を取り除いた後, 蒸留水に浸漬し, 微小面分光色差計を用いて胚乳断面の色 (L, a, b) を測定した. 蒸留水に浸漬した試料の胚乳断面色を経時的に測定した結果, 4時間後にLが安定することが明らかとなり, 浸漬時間は4時間が適当であることが示された. また, 胚乳断面色は, L, a, bのいずれも, ふすまが混入していない胚乳粉色との間に高い相関関係が認められ, 胚乳断面色を測定することにより, 胚乳粉色を推定できることが明らかとなった. さらに, 胚乳断面色と従来法による粉色の評価を比較した結果, 黄色みにおける評価は一致するが, 明るさにおける評価は従来法がふすまの混入の影響を受けるため一致しないことが示された. 国内外の24品種・系統について胚乳断面色の測定値間の関係をみると, aとbの間に高い相関関係が認められ, これらの品種・系統の胚乳の色相がほぼ同じ (やや緑がかった黄色) であり, 彩度の高いものほど黄色みが強いことが明らかとなった. さらに, 彩度とbの間には非常に高い相関関係が認められ, 実際に黄色みについて選抜をおこなう場合にはbを指標として用いることができると考えられた. 一方, ふすまの混入による粉色の変化を検討するため, 胚乳粉色とブラベンダー製粉機で製粉して得たA粉の粉色を比較した結果, 製粉時のふすまの混入は粉色のLを低下させ, 低下の程度は品種・系統によって異なることが明らかとなり, ふすまの混入による粉の暗色化の程度には, 品種間差があることが示された. また, 本研究で用いられた品種・系統では硬軟質性及び粗タンパク含量に関わらず, 胚乳断面色のLが高いものが存在し, 硬質, 軟質の両方において胚乳色の優れた系統を選抜でき, さらには子実のタンパク含量が高く, かつ胚乳色の優れた系統を選抜することが可能であることが示唆された.
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