育種学研究
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イネ縞葉枯病抵抗性品種が有する穂いもち抵抗性の遺伝子分析
藤井 潔早野 由里子杉浦 直樹林 長生坂 紀邦遠山 孝通井澤 敏彦朱宮 昭男
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1999 年 1 巻 4 号 p. 203-210

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抄録

イネ縞葉枯ウイルス (RSV) 抵抗性の日本型水稲品種「月の光」および同じくRSV抵抗性をもつその姉妹品種「朝の光」が有する穂いもち抵抗性の遺伝子を同定するため, これら品種と感受性品種との交雑F1, F3およびF4を用いて穂いもち抵抗性に関する遺伝子分析を行った.「月の光」と感受性の「あ系他494」とのF1における穂いもち罹病籾率の逆正弦変換値は, 「月の光」のそれと有意差がなく, 穂いもち抵抗性が優性形質であることが明らかになった. 一方, 「朝の光」と感受性品種の「コシヒカリ」とのF3119系統は, 朝の光型固定系統, 分離型系統およびコシヒカリ型固定系統の明瞭な3群に分類され, その比は1遺伝子分離の期待比1: 2: 1に適合した.また, 「月の光」と感受性品種の「黄金晴」とのF460系統は, 月の光型固定系統, 分離型系統および黄金晴型固定系統に分類され, その比は1遺伝子分離の期待比3: 2: 3に適合した. これらの結果と, 「月の光」と「朝の光」の育成歴から, これら2品種の穂いもち抵抗性は同一の優性主働遺伝子に支配されていると考えられた. この穂いもち抵抗性遺伝子は, その作用力からみて新規の遺伝子とみなせることから, Pb1と命名した. Pb1とRSV抵抗性遺伝子Stvbiとの連鎖分析を, 両抵抗性を欠くコシヒカリと両抵抗性を持つ朝の光とのF3119系統を用いて行ったところ, 両抵抗性遺伝子は組換価5.2±1.5%で連鎖していることが明らかとなった. また, 月の光/黄金晴のF460系統, 葵の風の育成過程で得られたRSV抵抗性と感受性の姉妹系統6種を用いた分析でも, 両抵抗性遺伝子間の連鎖が確認された.

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