育種学雑誌
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水稲における系統育種法,集団選抜法および混合育種法の比較
松尾 孝嶺中島 哲夫小松崎 亮菅原 清康
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1960 年 10 巻 1 号 p. 33-41

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抄録
日本稲「農林36号」と中国稲「〓支江」(A型)との雑種集団のF2以降について,それぞれ系統育種法、集団選抜法および混合育種法によつて選抜を行ない,これらの3つの育循方式間の効率を比較した。(1)系統育種法の材料について個体一系統間(F2~F3,F5~F6)および系統一系統間(F3~F4,F6~F7)の主要形質の親子相関係数を求めたところ,出穂期,稈長穂長,米質、耐病性などについては高く,一株穂重,穂数ついては低いことが認められた。それにもかかわらず,F7ならびにF8の比較から稈長ならびに一株穂重に関するF2世代の個体選抜が有効であることが認められた。(2)環境の異なる3カ所で混合栽培をつづけた集団では,出穂期,稈長,収量,耐病性などについての自然淘汰がそれぞれの環境条件によつて異なる方向に働いていることが認められ,混合育種法においては育種試験地の環境がとくに重要な役割をもつと推定された。(3)それぞれの育種方式によつて選抜されてきたF7およびF3の系統の能力を比較した結果から,系統育種法による後代に,収量,強稈性,出穂期等について優れた系統が多いことが認められ。また,集団選抜法では毎代ヘテロの個体を選抜する可能性の高いことが示された。(4)系統育種法が混合育種去より優れた成果を示した原因について考察し、それぞれの育種法の施行上の問題点を検討した。
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