抄録
1.水稲の耐冷性の遺伝様式を明らかにしようとして,耐冷性極強の有芒〓色のある在来品種「染分」と,耐冷性極弱の無芒無色の交配種「青森5号」の組合せを供試した。2.耐冷性の強弱を検定するために夜間のみ約14℃の冷水を掛流す中期冷水灌漑法を使用し,最長稈の不稔歩合の角度変換 sin-1√(%)したもので耐冷性の強弱を示した。3.同一年次に同一処理方法によつて分析するため冬季間に室温を利用して世代短縮と株保存を行い,P1,P2,F1,F2,B1,B2,F3系統,F4系統群をそろえて試験を行つた。4.雑種初期世代の耐冷性の変異は量的形質としての分離を示したので,MATHER(1949)により提唱された方法によつて分散成分の分割を行つて,相加的遺伝分散Dと非相加的遺伝分散Hおよび環境分散Eを推定した。5.耐冷性の遺伝力は初期世代においても極めて高く,F2の狭義の遺伝力で0.639,F3系統で0.835が得られた。又耐冷性の有効因子数として7以上が推定された。6.耐冷性有効因子と既知主働遺伝子との連鎖関係についてはgl連鎖群およびSp連鎖群とは独立であるがPl連鎖群に属するRp遺伝子および連鎖郡不明の芒性遺伝子Anの一つの間に連鎖関係が認められた。7.これらの結果より耐冷性は5~7対の相加的効果をもつ優性遺伝子によつて支配されているものと推論された。