抄録
イネ品「水稲農林29号」の乾燥種子にγ線照射をおこない,cysteineまたはNa2S2O4の溶液に浸漬し発芽せしめた。cysteineの後処理の影響はわずかながらすべての調査形質(生存率・稔実率・突然変異頻度)にみとめられた。とくに,30,000r照射では,成熟期の生存率を有意にたかめると同時に突然変異頻度をも低下せしめた。一方,Na2S2O4の後処理は成熟期における生存率や稔実率をたかめたが,突然変異頻度を減少せしめたかった。そのために,Na2S204の後処理は放射線による突然変異利用の育種効率をよくするのに有効である。cysteineの後処理は突然変異のスペクトルにも影響を与えたが,Na2S2O4の後処理では差異がなかった。これらの結果から,放射線照射後に乾燥種子中におこるとおもわれる変化について,放射線化学的考察がたされた。この実験をおこなうにあたり,いろいろと御指導をいただいた松尾孝嶺教授に篤く感謝する。また,この実験の一部は,昭和33年度文部省総合研究費によっておこなうことができた。ここに付記して謝意を表する次第である。