抄録
(1)前報と取寄先を異にするモミジアオイとクサフヨウとの種間雑種について研究を行つた。これらの材料は現在京都大学農学部にも保存中であるが,両親の入手経路ならびにF1植物の育成経過の詳細は不明である。(3)F1は著しく雑種強勢を示した。F1の開花始めは両親より早く,終りは両親よりおそく,その期間は両親より著しく長かった。F1の花は両親より大きく,花弁も濃赤紫色を呈し,両親よりも華麗であった。(3)F1のPMCにおける染色体の接合はきわめて良好で,特に異常は認められず,4分子の割合も両親同も極めて良好であった。F1の一筋中の種子数は両親の中間であった。両親ならびにF1の染色体数はいずれも2n=38であった。(4)F2種子の大きさはモミジアオイと略々同じで,発芽歩合も両親と略々同様に50~60%を示した。F2の生育状況は両親の中間あるいは両親のいずれかに略々同じであって,F1の如く著しい雑種強勢は認められたかった。(5)茎色と葉色とに関与する遺伝子は同一と認められ,モミジアオイは濃赤褐色,クサフヨウは緑色であり,F1は全個体が濃赤褐色であり,F2は大部分が濃赤褐色で,ごく一部が淡赤褐色で,緑色の個体は現われなかった。茎葉の色の発現には多数の同義因子が関与するものと思われる。(6)花色についつはモミジアオイは濃赤色で,クサフヨウは淡赤紫色である。Flは濃赤紫色を呈し,F2は濃赤紫色と濃赤色および淡赤色とが現われ,淡赤紫色の個体は現われなかった。花色の発現には色原質の外に多数の遺伝子が関与するが,詳細はべ一パークロマトグラフ法により研究中である。(7)葉型はモミジアオイが掌状,クサフヨウが楕円型であり,F1は両親の中間の細三葉型であったが,F2は楕円型を除いては,両親の間の種六の型が現われた。葉型にも多数の同義因子が関与するものと思われる