育種学雑誌
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稲の幼穂分化・発育に伴う生長円錐の形態および生理的変化の研究 : II.RNA,蛋白,アミノ酸類および可溶性糖類の変化
村上 寛一
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1962 年 12 巻 2 号 p. 85-92

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抄録
稲の幼穂の分化・発育に伴う生長円錐での生理的機作を知る目的で,先に生長円錐および幼穂での多糖類の分布とその変化を観察した。本研究ではさらにRNAと蛋白の分布を組織化学的に,アミノ酸類と可溶性糖類(葡萄糖,果糖,庶糖)の変化をぺ一バー・クロマトグラフィーで観察した。RNAと蛋白に生長円錐および幼穂でその分布の地域性がほぼ一致し,これらは多糖類が検出されないか或いは少ない次のようだ部位に主として分布する。すなわち両者は葉の原基や幼穂の諸器官が活発に分化・発育している部位にその濃度が高い。幼穂の分化に伴う生長門錐での可溶性糖類の変化は多糖類の消長と関係し,アミノ酸類の変化はRNAや蛋白の濃度の変化と関係があることが認められた。以上の研究結果から,幼穂の分化・発育は分裂能をもつ組織での多糖類蓄穫の増加→多糖類合成作用の低下一ト多糖類合成作用優越段階から蛋白合成・多糖類分解作用優越段階への変化という過程によって誘起・促進されるという結論が示唆された。器官形成の際にみられる上述の生理経過は栄養生長期および幼穂発育期のいづれでも基本的には同じであることが認められた。
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© 日本育種学会
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