抄録
1.フィリピン稲Tadukan(1回親♀)に農林8号を交雑し,以後雑種株を常に母とし農林8号で3回反復戻し交雑した後代から育成された系統は,花粉と胚嚢の受精機能は正常であるが,例年日本稲品種よりわずかに不稔花を多く生ずる性質をもっている。2・育成系統と日本稲品種とのF1は,正逆交雑により稔性に著しい差異を示した。F1育成系統X目本稲ではいずれも不稔性を示し,逆交雑ではすべて正稚の稔性を示した。かような事:実は,F1育成系統X日本稲及び育成系統にみられる不稔性が,細胞質と核内遺伝子との相互作用による細胞質的不稔性であることを示している。3・F1育成系統X日本稲の不稔性の程度により,日本稲交雑親は低不稔性を結果するものと,高不稔性を結果するものとの2群に大別された。4.F1の不稔性程度と爾の裂開性の難易との間に密接な関係が認められ,高不稔性を示す組合せほど裂開がよくたいことが観察された。5.育成系統の不稔性に関与する細胞質は1回親のTadukanに由来するものと考えられ,この細胞質は日本稲の反復戻し交雑によっては変化したいものと認められた。