抄録
F2 SurjamkhiX農林1号にみられる異常分離の原因として,さきの報告で考えられたC遺伝子の欠失,ならびに,重複のおこる機構について,再検討がなされた。さきの報告(水島・近藤,1959,’60)では,Cの異常分離の原因として,C遺伝子座の潜性転座,または,約50%の組換価をもって包含逆位でずれていることか推論された。本研究は,F5 Surjamkhi×農林1号の着色個体に北海糯1号(C+A+Pgl)を交雑したF2で,花青素着色と糯粳性の両形質の分離を調査Lた。供試されたF5個体中の1個体はC遺伝予を重複してもつ系統(CB1CBAP)と判定され,Lかも,そのC遺伝子の1つとglとは明らかに連鎖関係があり,独立遺伝しない。このことから,重複や欠失を起こす遺伝子のうちの,Cと判定されているものは,C自体であることがあきらかである。その他の4検定交雑F2の中,3系統でC-glの組換価が算出され,従来明らかにされている値と近い大きさであることがわかったので,C遺伝子の異常分離の原因は,包含逆位や,潜性転座よりも,むしろ,重複染色体の異常接合に帰せられるものと結論された。