育種学雑誌
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遺伝変異を最大にする数形質の線形結合
斉尾 乾二郎
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1969 年 19 巻 6 号 p. 457-459

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抄録

いくつかの形質測定値の線形結合のうちで、その全変異にたいして遺伝変異が最大になるものは、形質測定値をベクトル変量であらわすと、遺伝ベクトル変量Yおよび表現型ベクトル変量Xとの間の第1正準変量であることがわかる。また第1正準相関の平方がその合成形質(形質の線形結合)の遺伝率となる。このときEを環境ベクトル変量とすれば、X=Y+Eという模型にもとづいている。ここにYのいずれの成分もEのいずれの成分とも無相関であるとする。実際の問題への適用を考えてみると、イネのいもち病抵抗性、ダイズの草型、カイコの強健性等々のように、どのような尺度で評価してよいかきめにくい形質の評価基準として、この概形結合をもちいうる。すなわち評価したい形質の尺度となりうる可能性をもった関連形質をいくつかとりあげ、それらの線形結合のうちで遺伝率最大のものを、求める評価基準とするわけである。このとき線形結合にくみいれるためにとりあげる形質は、その測定値で推定した標本遺伝共分散行列が正半定符号であるものだけとする。これは正半定符号でない行列をもちいて正準解析をするわけにはいかないからであるが、このことはまた、間接的であるにせよ、遺伝統計量の標本誤差の大きい形質測定値をおとしたことになり、十分意味のあることである。いずれにしても、評価基準というものは環境変異にたいして安定していなけれぼならないという観点からすれば、この線形結合は最良のものである。なお大豆の草型のデータにもとづいた数値例をあげた。

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