抄録
種属間交雑のさいに偽受精現象によって生ずる傾母植物が完全なホモ接合体であるかどうかを知ろうとして、ダイコンとミズナとを用いて四倍体間に交配を行なった。その結果、ダイコンの傾母植物3個体を得た。それらの染色体数はそれぞれ36,36および37であった。細胞学的観察結果によれぱそれらはいずれも奇数個の相同染色体を少なくとも一組を持ち、二倍性卵細胞の染色体倍加によって生じたものではないと推論せられた。この傾母植物の成因としては8倍性胚嚢母細胞の減数分裂によって生じた4倍性卵細胞の単為生殖的発達によると考えることが妥当と思われる。一般に傾母植物は生育旺盛でしかも変異に富むとされるが、これはヘテロ接合体として理解すれば説明がつきやすい。