本研究は世界各国で育成されたてん菜二倍体品種についてO型(雄性不稔の維持系統としての遺伝子組成をもつ)、回復型個体頻度を推定し、てん菜集団中に含まれるこれらの頻度に関する統一的な見解をえようとしたものである。供試23品種中5品種については検定親との間で1対1の個体間交配を行ない、各F
lの不稔型分離割合から第3表に示した基準にしたがい、被検定個体を8種類の不稔型タイプに分類した。他の大分の品種については大麻隔離によって雄性不稔との交配を集団として行ない、F
1の不稔型分離割合から第1図に示した方式にもとづいてO型、回復型頻度を推定した。その結果、O型あるいは回復型のみからなる品種は存在せず、大多数の品種において両型とも15%以下の低い頻度であることが推定された。O型頻度の品種間差異として、比較的高いO型頻度をもつ品種は欧州のてん菜育種の古い歴史をもつ国の育成品種に多く、逆にO型頻度の低い品種はてん葉先進国以外の国の品種か褐斑病低抗性あるいは中程度の品種に多い傾向がみられた。根重型方向への選抜がなされてきた系統において、8種類の不稔型タイプのうち回復型に属するE.Rタイプが母集団に比べて増加していた。O型個体の選抜においては、被検定個体を母系系統(半姉妹系統)として保存し、O型頻度を向上させてのちに栄養繁殖法を用いるのが経済的な育種法として有効と考えられる。
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