抄録
雑種コムギ育成の基礎研究の一環として、パンコムギのF1雑種にみられるヘテローシスを調査した。日本および米国の12実用品種を親として66組合せのF1雑種をつくり、その出穂日、草丈、収量について親品種と比較した。F1の出穂日は両親の中間ないし早い親よりも早いものが大部分で、一代雑種を実用化する上でまったく問題がない。草丈は平均としては高い親品種と同程度になったが、それより有意に草丈の高いF1が約10%あった。したがって、一代雑種の育成にあたっては、草丈に関して親品種の選択を注意して行なう必要がある。収量については、F1は収量の高い親品種よりも平均して34%高かった。また、最高のF1は最高の親品種よりも35%収量が高かった。このことから、実用化に値するヘテローシスが日本のパンコムギにもあることがわかった。コケシコムギは日本品種に対し、ユタカコムギは米国品種に対し高い組合せ能力を示した。