育種学雑誌
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チヤの葉芽および花芽の発育におよぼす放射線の影響 : I. 葉芽数および花芽数の変化
工藤 和美蓬原 雄三
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1974 年 24 巻 4 号 p. 169-175

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抄録

チヤは葉芽の分化発育と花芽の分化発育を枝の頂端と葉腋の同一場所でくらべられるので,放射線障害に関する研究に好適な材料である。このような観点から,チヤを用いて一連の放射線照射実験を行なった。これまでに得られた主肢結果は次の通りである。1)葉芽の分化発育期照射では,線量率の増加にしたがって葉芽の発育は阻害されて葉芽は欠失し,その結果,葉芽数は減少する。一方,花芽の分化発育への影響は葉芽のそれにくらべて少なく,そのため花芽数の変化は少ない。2)花芽の分化発育期照射においては,高線量率で花芽の分化発育は阻害されて花芽数は減少するが,100R/d以下の線量率区ではほとんど変化しないか,むしろ増加する。一方,葉芽数は低線量率区ではむしろ増加する。これは,2個の葉芽を形成することに起因するものであるが,このような現象は対照区では認められない。3)葉芽と花芽の分化発育期を含む全期問照射では葉芽の分化発育期照射と似た反応様式がみられ,葉芽数は減少するが花芽数は高線量率区以外はほとんど減少しない。しかしながら一方,5年にわたる低線量率継代照射では花芽数はむしろ対照区より増加する。4)全照射区とも,葉芽と花芽が同一頂芽内で同時に増加する例は認められなかった。5)生育時期別照射による花粉稔性への影響についてみると,全照射区とも総線量に比例して不稔花粉が増加する。6)花芽の発育に対する放射線の影響に関しては,春枝と夏枝との間には顕著な差は認められなかった。

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