育種学雑誌
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耐塩性イネ品種の育種 : II. イネ品種の生育初期における塩処理に対する反応比較
M・アクバル藪野 友三郎
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1974 年 24 巻 4 号 p. 176-181

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抄録

栽培イネ品種Blubonnet,IR8,Jhona349とMagnoliaの生育初期における塩処理に対する反応を種子発芽,芽生の生長量および根の再生力について比較した。 (1)種子発芽調査では蒸溜水中に塩化ナトリウムと塩化カルシウムを等量宛含む5,O00;10,000;15,000と20,OOOPPmの塩濃度区の25±1℃条件下での2週間の発芽状態と対照区(蒸溜水のみ)におけるそれとを比較した。 (2)芽生の生長量の比較は培養液(硫酸アンモニウム35.5mg,硫酸マグネシウム30.6mg,硝酸カルシウム29,2mg,燐酸カリウム12.3mg,硫酸カリウム16.1mg,クエン酸鉄5.4mg/l,pH6.0)を含む1,000;'2,OOOと3,000ppmの塩濃度区と対照区(培養液のみ)で発芽後1か月間,25±1℃,相対湿度70%,照度2,600ルックスの条件下で培養し,芽生長,根長,茎葉と根の範燥重量を測定して行なった。 (3)根の再生力についての比較は上記(2)で用いたと同じ培養液と温度・湿度・照度条件下で1か月間生育させた健全苗の根を約1mmの長さに切除し,その苗を培養液を含む1,000;2,O00;3,000と4,000PPmの塩濃度区と対照区(培養液のみ)へ移植,10日間培養し,再生根長と芽生当りの根数の調査によって行なった。 これらの結果,次のような一般的傾向が認められた。 (1)塩の濃度が高くなると発芽に要する日数も多くなる。特にIR8は15,000と20,000ppm濃度区で顕著な発芽遅延を示した。 (2)発芽後1か月間の塩処理は供試4品種の芽生長と根長に対して抑制的作用を示し,茎葉と根の乾燥重は対照区に比し1,000ppm区ではむしろ増加したが,2,000と3,000ppm区では減少し,根重は茎葉重に比し,より大きい塩処理の影響を受けた。 (3)根の再生力に対する塩処理の影響は再生根長と芽生当りの根数の減少として示された。 Magnoliaの種子発芽に対する塩処理の影響は最も軽度であったが,同品種の茎葉と根の乾燥重は3,O00PPmの塩処理区で最も顕著な減少を示し,IR8はこれと逆の傾向を示した。このように生育初期における供試4品種に対する塩処理の影響の程度は対象とした調査形質によって異なっていた。全生育期間を通じて耐塩性を示すようなイネ品種を育成するには種々の生育相における塩に対する反応を綜合的に考慮して選抜することが必要であろう。

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