理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1218
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理学療法基礎系
感覚刺激が動的動作に及ぼす影響
*宇都宮 裕葵吉水 真美田島 徹朗
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キーワード: 感覚刺激, 姿勢調整, TUG
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抄録
【はじめに】我々は、平成18年度同学術大会において感覚刺激が静的立位に及ぼす影響について検討し、静止立位では、寒冷刺激が最も重心移動に影響を及ぼすことを確認した。そこで今回、同刺激が動的な姿勢調整に如何なる影響を及ぼすかについて検討したので報告する。
【対象】健常群23名(平均24.9歳)、患者群28名(脳卒中群16名、骨関節疾患群12名、平均65.9歳)であった。なお、健常群において、バランス能力に著しい影響を及ぼす既往のある者は除外した。
【方法】非刺激A、刺激B:寒冷(平均-3.1°C)、刺激C:温熱(平均54.8°C)、以上3刺激を用い、立位動的バランス能力を表す指標として有用とされているTimed up and go test(TUG)を計測した。また、健常群においては通常n-speedの方法と「なるべく急いでf-speed」の2方法で測定した。足底刺激は、健常群では左側のみに、患者群では障害側に各々5分間施行した。
【結果】健常群において、n-speedは非刺激Aと比較して刺激B、Cにて有意に速くなった。しかし、f-speedでは有意差は認められなかった。次に脳卒中群では、刺激BによりTUGが有意に速くなり、骨関節疾患群では全てにおいて有意差は認められなかった。
【考察】ヒトは、1.皮膚感覚、2.筋の固有受容器、3.関節受容器、4.前庭迷路器、5.視覚からの情報を上位中枢で統合・処理し運動器に対しフィードバックを行うことで姿勢を保っている。その中でも足底は唯一、床との接地面であり、その情報は他より優位に中枢神経系で統合・処理されることから立位姿勢制御にとって重要であると言われている。我々は前学会にて、足底への刺激Bが静的姿勢に影響力があることを報告した。今回、これを基に同刺激が動的動作に如何なる影響を及ぼすか追求した。健常群の結果に差が生じたことは、前回同様に刺激B、Cを異常情報として捉えた結果と思われ、その影響がn-speed時に著明に出現したものと推察される。つまり、姿勢制御機構に混乱が生じた結果、他の姿勢制御機能の代償や関節周囲筋の収縮強化により支持性が向上し、これがTUGの速度上昇に繋がったと考えられる。また、脳卒中群では前回、刺激Bにより麻痺側への重心移動が起こり、結果麻痺側の支持性が高まったことで静的バランス向上が認められた。今回の動的動作においても同様の作用が起こり、足底からの感覚フィードバックが増加した結果、麻痺側の支持性が向上し、TUG速度が上昇したのではないかと推察される。
【まとめ】今回、寒冷による足底刺激が動的な姿勢調節に影響を及ぼす事を確認し、その感覚情報入力の重要性を再認識した。しかし、臨床では機能障害の影響に相違があるため、今後は運動障害の程度、また疾患による特性を併せて検討する事が重要であると考える。







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© 2007 日本理学療法士協会
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