抄録
アメリカ合衆国農務省グレンデール植物導入局に栽培されているツバキ属7節24種30系統を使って,花粉の大きさと変異性を調査するとともに染色体数や種形成との関連性ならびに主要種の類縁的位置づけについて検討した。ツバキ属植物は倍数性をしめす近縁植物群である。調査した系統には,例外的に,花粉母細胞減数分裂異常による巨大花粉がよく現われ,花粉径の数的変異が大きくて分析をやや困難にさせたものもあった。ほとんどの種では花粉の大きさと染色体数には相関関係がみられたが,これらをさらに分析すると,節間種間よりも節内種間,そして種問よりも種内の異なった染色体数をもつ系統問により強い相関関係がみられた。一方,数世紀にわたって栽培,選抜,育種がくり返され,作出された栽培品種に代表される種に比べて,今まで栽培の歴史をもたなかった自然集団から採集の種の方が,小型で,大きさ(数的変異)ならびに形態においてより均一化した花粉がみられることがわかった。より高度に分化した栽培品種は,野生個体よりも,移入交雑や雑種化をおこLやすく,より異型接合体であることが考えられる。広範な数的変異と不良花粉が多発される種または栽培品種は,過去文献で“雑種起源説でよく論ぜられたものと一致する。したがって,花粉の大きさ,変異性,そして優良花粉の出現率は,ツバキ属各種の雑種性の指標の1つと考えられる。