育種学雑誌
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数種植物の葯内被組織の発育に及ぼす除雄剤処理の影響
S.V. S. CHAUHAN木下 俊郎Toshiro KINOSHITA
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1982 年 32 巻 2 号 p. 139-145

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抄録
トウガラシ, Datura alba, Ranunculus muricatus, セイヨウカボチャおよびゴマを材料として,MH,FW450(Mendok)およびDalapon(2,2-dichloropionic acid)による処理を行った。散布処理の濃度および処理回数を高めると,種々の程度の花粉不稔および葯の不裂開を生じた。正常型と各種の不稔型とについて小胞子と葯組織の発育異常を比較観察した。正常型では,まず小胞子の発育ならびにタペート細胞の崩壊が順調に進み,その次に内被細胞の放射線方向への伸長と帯状の繊維構造の発達が顕著となった。これに対して,処理によって誘発した部分不稔型IおよびIIでは,タペート組織の崩壊が遅れ,その後,内被組織における繊維帯の発達が不良となった。また,完全不稔型では,タペート細胞は単なる肥大やpseudoperiplasmodium形成といった多様な肥大現象を起し,内被細胞は放射線方向へ伸長しないだけでなく,繊維帯も生じなかった。この型では花粉は100%不稔となり,葯も完全に不裂開となった。しかし,稀には100%花粉不稔でありながら,内被組織の繊維帯を生ずる場合があった。 かかる観察結果から,除雄剤処理によっても,細胞質雄性不稔性や核遺伝子雄性不稔性の場合と相似たタペート組織の発育異常を生じてこの後に花粉の退化が起る。内被組織の発育不良も,タペート組織における異常型につづいて引き起されるので,おそらくタペート細胞の異常現象と何らかの関連性を有するものと考えられる。
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