タバコ種子の暗発芽性が二重劣性遺伝子によって発現するとした既報での推論の妥当性を,要光性品種桐ヶ作×暗発芽性品種XanthiのF
2世代以降の遺伝行動によって検証した。供試したF
2 68個体は,各個体の自殖F
3種子ならびに,F
2個体×Xanthiの検定交雑種子の暗発芽率によって2群に分類できた。第I群は,F
3種子と検定交雑種子がともに暗発芽しなかった29個体からなり,第II群は,F
3種子と検定交雑種子がそれぞれ8.0~96.0%,22.0~97.0%の範囲の暗発芽率を示した39個体からなる。第I群29個体の示した行動は,われわれの提唱した二重劣性遺侯子仮説のもとで,AABB×aabbのF
2世代で期待される9種類の遺伝子型のうち,AABB,AABb,AaBB,AAbb,aaBBのいずれかを有するとしたときよく説明できた。次に,検定交雑後代の系統平均値と標準偏差によって細分類した結果,29個体のうち4個体はAABB,8個体はAAbbまたはaaBB,残り17個体はAABbまたはAaBBの遺伝子型を有することが明らかになった。さらに,AAbbまたはaaBBの遺伝子型を有するとした8個体のうち7個体について検討を行ない,2個体がAAbb(またはaaBB),他の5個体がaaBB(またはAAbb)の遺伝子型であることが判った。第II群39個体について考察を行ない,うち6個体はaabb,33個体はAaBb,Aabb,aaBbのいずれかの遺伝子型を有すると推定した。以上の結果にみられたF
2 68個体の遺伝子型の頻度分布は,二重劣性遺伝子仮説のもとでの理論頻度によく適合し,この仮説の妥当性を検証することができた。
抄録全体を表示