育種学雑誌
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32 巻, 2 号
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  • 松田 長生, 大村 三男, 秋浜 友也
    1982 年 32 巻 2 号 p. 123-128
    発行日: 1982/06/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    ニホンナシにおける品種の識別・同定に役立つ新形質を探索するため,今村秋,翠星,菊水,長寿の4品種の乾燥花粉の表面微細形態を走査型電子顕微鏡を用いて観察した。 ニホンナシの花粉外壁の模様は,指紋状であり,ウネ,微散孔,微細突起が外壁上に観察された。これらを組み合わせた微細形態が,品種により差異のあることが認められた。しかし,この微細形態は同一品種内である程度の変異がみられ,この変異は同一葯内においても観察された。 次に,形態的な差異を量的に評価するため,花粉形態の数値化を試みた。走査型電子顕微鏡写真をもとに,各品種50花粉ずつ,次の12特性を選出した。まず,花粉粒の,1.極軸の長さ,2.赤道直径,3.発芽溝間の距離を測定した。次に,同じ花粉の花粉外壁中央部5μm四方内の,4.微細突起の数,5.微散孔の数,6.微散孔の総面積,7.極軸に沿ったウネの数,8.赤道に沿ったウネの数を測定Lた。そして,9.花粉粒の形(赤道直径に対する極軸の長さの比),10.発芽溝の引っ込み(発芽溝間の距離に対する赤道直径の比),11.徹散孔1個当りの平均面積(微散孔の総面積を微散孔の数で除した商),12.ウネの傾き(極軸に沿ったウネの数に対する赤道に沿ったウネの数の比)を計算した。
  • 金田 忠吉, 池田 良一, 陳 永大
    1982 年 32 巻 2 号 p. 129-138
    発行日: 1982/06/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    トビイロウンカ抵抗性の日本型品種を育成するのには,抵抗性遺伝子源のインド型品種に多くの戻し交配を行う必要がある。育成初期に得た系統でウンカに対する抗生作用(Antibiosis)-虫の生存率,羽化率,虫体重の低下や,羽化迄日数の増大など-の程度が遺伝子源品種より弱まったと思われたので,戻し交配を継続すれば抗生作用程度はかなり低下するか否かを確かめる必要があった。また抗生作用の弱まり方に抵抗性遺伝子Bph1とbph2との間に差があるようにみえた。以上の点を確認するために,両遺伝子型について,近似的isogenic系統を含む各種の育成段階の系統を用いウンカ抵抗性を要因別に検討した。 まず反復親の日本品種とB0~B1,B6~B7の2育成系統との第6本葉期のイネに成虫を放飼して7日間自由に産卵させた。Bph1,bph2の両群とも,日本品種と育成系統との間に着生成虫数,ふ化幼虫数に差があった。Bph1の群では1~0.5%水準の有意差,bph2の群では5%水準の有意差で,戻し交配回数による差はいずれの群でも認めなかった(第1図)。
  • S.V. S. CHAUHAN, 木下 俊郎, Toshiro KINOSHITA
    1982 年 32 巻 2 号 p. 139-145
    発行日: 1982/06/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    トウガラシ, Datura alba, Ranunculus muricatus, セイヨウカボチャおよびゴマを材料として,MH,FW450(Mendok)およびDalapon(2,2-dichloropionic acid)による処理を行った。散布処理の濃度および処理回数を高めると,種々の程度の花粉不稔および葯の不裂開を生じた。正常型と各種の不稔型とについて小胞子と葯組織の発育異常を比較観察した。正常型では,まず小胞子の発育ならびにタペート細胞の崩壊が順調に進み,その次に内被細胞の放射線方向への伸長と帯状の繊維構造の発達が顕著となった。これに対して,処理によって誘発した部分不稔型IおよびIIでは,タペート組織の崩壊が遅れ,その後,内被組織における繊維帯の発達が不良となった。また,完全不稔型では,タペート細胞は単なる肥大やpseudoperiplasmodium形成といった多様な肥大現象を起し,内被細胞は放射線方向へ伸長しないだけでなく,繊維帯も生じなかった。この型では花粉は100%不稔となり,葯も完全に不裂開となった。しかし,稀には100%花粉不稔でありながら,内被組織の繊維帯を生ずる場合があった。 かかる観察結果から,除雄剤処理によっても,細胞質雄性不稔性や核遺伝子雄性不稔性の場合と相似たタペート組織の発育異常を生じてこの後に花粉の退化が起る。内被組織の発育不良も,タペート組織における異常型につづいて引き起されるので,おそらくタペート細胞の異常現象と何らかの関連性を有するものと考えられる。
  • 北野 英巳, 蓬原 雄三
    1982 年 32 巻 2 号 p. 146-154
    発行日: 1982/06/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    前報において矮性突然変異系統ふ系71号の節間伸長は,原品種および他の突然変異系統とは著しく異なった温度反応を示すことを明らかにした。本報ではふ系71号の節間伸長におよぼす生育温度の影響をさらに詳細に調べるとともに,異なった温度条件下で伸長した各節間の外部および内部形態的特徴を明らかにする目的で行った実験結果について報告する。 突然変異系統ふ系71号および原品種フジミノリの生育期間を3段階(栄養生長期,生殖生長前期,生殖生長後期)に区分し,ファイトトロンを用いて高温(30℃~25℃)および低温(23℃~18℃)下で両系統をポット栽培した。処理温度と処理期間の組み合わせで合計8種類の異なった温度処理を行った結果,ふ系71号の稈長は,本実験で用いた処理範囲内で,フジミノリに比較して大きな変動を示した。さらにふ系71号は,生殖生長後期,すなわち節間伸長期にあたると考えられる時期の高温に最も強く反応して短稈化を示した。このような傾向はフジミノリでは全く認められず,ふ系71号の特異的た温度反応であることが確かめられた。 次に高温および低温下で生育させた両系統の各伸長節間における縦断および横断切片を作成し顕微鏡観察を行ったところ,ふ系71号では,高温処理によってフジミノリに比較して各節間における柔組織の縦列細胞数が減少し,逆に横列細胞数は明らかに増加する傾向が認められた。さらに,ふ系71号の各節間を構成する柔細胞(Parenchyma cell)は,高温処理によって不斉一た異常形態を示すことも観察された。これに対し,低温処理区におけるふ系71号の各節間組織とフジミノリのそれとの間には明確な形態的差異は認められなかった。
  • 長戸 かおる, 大曽根 兼一
    1982 年 32 巻 2 号 p. 155-161
    発行日: 1982/06/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    チャ(Camellia sinensis L.)の種内は,一般にはvar. assamica(アッサム種)とvar.sinensis(中国種及び日本種)の2変種に大別されている。これまでのチャの種内分化に関する研究は主として形態的特徴に基づいており,遺伝的変異については明らかになっていない。そこで本研究では,エステラーゼアイソザイムの変異に基づき,チャ種内の各集団の遺伝的関係を明らかにしようと考えた。 検出された18本のバンドのうち,3本のバンドは,供試したほとんど全ての系統で出現し,チャにおける基本的なバンドであると考えられる。またアッサム種に固有なバンドは2本,中国種では1本であったが,いずれも出現頻度の極めて低いものであった。日本種で検出されたバンドは全て中国種でも見られた。バンドの出現頻度に関しては,アッサム種と中国種の間で5本,アッサム種と日本種の間で6本,中国種と日本種の間で3本のバンドに有意な差が見られた。ザイモグラムに関しては,3種とも大きな変異を示し,各種を特徴づけるようなタイプを見い出すことはできなかった。 ザイモグラムのパターン分析を行ったところ,3種の分布は互いに重なり合い,明確な境界を認めることはできなかった。また集団間距離は,アッサム種と中国種・日本種の間が大きく,中国種と日本種の間は非常に小さかった。
  • 三浦 秀穂, 津田 周彌, 渡部 信義
    1982 年 32 巻 2 号 p. 162-170
    発行日: 1982/06/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    タバコ種子の暗発芽性が二重劣性遺伝子によって発現するとした既報での推論の妥当性を,要光性品種桐ヶ作×暗発芽性品種XanthiのF2世代以降の遺伝行動によって検証した。供試したF2 68個体は,各個体の自殖F3種子ならびに,F2個体×Xanthiの検定交雑種子の暗発芽率によって2群に分類できた。第I群は,F3種子と検定交雑種子がともに暗発芽しなかった29個体からなり,第II群は,F3種子と検定交雑種子がそれぞれ8.0~96.0%,22.0~97.0%の範囲の暗発芽率を示した39個体からなる。第I群29個体の示した行動は,われわれの提唱した二重劣性遺侯子仮説のもとで,AABB×aabbのF2世代で期待される9種類の遺伝子型のうち,AABB,AABb,AaBB,AAbb,aaBBのいずれかを有するとしたときよく説明できた。次に,検定交雑後代の系統平均値と標準偏差によって細分類した結果,29個体のうち4個体はAABB,8個体はAAbbまたはaaBB,残り17個体はAABbまたはAaBBの遺伝子型を有することが明らかになった。さらに,AAbbまたはaaBBの遺伝子型を有するとした8個体のうち7個体について検討を行ない,2個体がAAbb(またはaaBB),他の5個体がaaBB(またはAAbb)の遺伝子型であることが判った。第II群39個体について考察を行ない,うち6個体はaabb,33個体はAaBb,Aabb,aaBbのいずれかの遺伝子型を有すると推定した。以上の結果にみられたF2 68個体の遺伝子型の頻度分布は,二重劣性遺伝子仮説のもとでの理論頻度によく適合し,この仮説の妥当性を検証することができた。
  • 滝田 正
    1982 年 32 巻 2 号 p. 171-176
    発行日: 1982/06/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    自然日長が,作期移動による我が国の水稲品種の出穂期変動に及ぼす影響を明らかにする目的で2つの実験を行なった。早晩性を異にする感光性の高い5品種(ニホンマサリ,峰光,日本晴,中生新千本,黄金錦)に短日処理をした。この結果,7月20日頃に相当する日長(薄明と薄暮の各15分を加えて14時間45分)または8月10日頃に相当する日長(同じく14時間15分)は,夏至(同じく15時間5分)期の自然日長に比較し,出穂を促進させた。つぎに25℃の定温にした人工気象箱を用い,2月から9月まで播種期を移動させて,早晩生を異にする別の5品種(トヨニシキ,喜峰,ニホンマサリ,日本晴,中生新千本)への自然日長の影響を調べた。日長への感応度を調べるために花芽分化期(出穂30日前)における単位日長時間当りの出穂遅延度を調べた。この値の最大となる日長は,通常の栽培で花芽分化期と推定される7月1日頃から8月1日頃の日長であった。また到穂日数は,花芽分化期の日長が4月上旬以前の日長である場合は極端に短縮し,4月下旬以後の日長である場合は通常の栽培条件下の到穂日数に近かった。4月中旬は,短日から長日への移行点に当っており,この時期に花芽分化に入った感光性の高い品種は極端な出穂不揃いを示した。この理由として,短日効果が不十分なため同一株内に花芽分化した茎と花芽分化には至らなかった茎が生じたためと考察した。また4月に播種し屋外で生育させた場合は,長日条件の他に生育初期の低温により出穂が遅延した。 以上の結果から作期移動による出穂期変動は,夏至後の日長の変化によって大きく影響されると結論した。
  • 池田 良一, 金田 忠吉
    1982 年 32 巻 2 号 p. 177-185
    発行日: 1982/06/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    イネのトビイロウンカ抵抗性と萎縮病ならびに縞葉枯病抵抗性の連鎖関係を明らかにするため,トビイロウンカ抵抗性(Mudgo由来)中間母本系統関東PL2,ツマグロヨコバイおよび萎縮病低抗性(白米粉由来)中間母本系統関東PL3,縞葉枯病抵抗性(Modan由来)品種ミネユタカおよび感受性比較品種日本晴の間で相互交配を行ない,各F3系統において上記3病虫害に対する抵抗性検定を実施した。まずトビイロウンカ抵抗性遺伝子Bph1と萎縮病抵抗性遺伝子は互いに独立であることがわかった。また関東PL2および関東PL3がいずれも縞葉枯病抵抗性を示すので,これら2系統の縞葉枯病抵抗性に関する遺伝子分析を行なった。その結果,関東PL2は3対の同義遺伝子に,関東PL3はミネユタカのSt2iと密接に連鎖している1対の遺伝子にそれぞれ支配されていることが明らかにされた。最後に,Bph1と関東PL2の3対の縞葉枯病抵抗性遺伝子も互いに独立であった。これらの結果から,トビイロウンカ,萎縮病および縞葉枯病に対する複合低抗性の集積は実現可能であると結論できた。一方,関東PL2の3対の縞葉枯病抵抗性遺伝子はいずれもSt2iとは別の遺伝子であると推定された。
  • 吉田 智彦
    1982 年 32 巻 2 号 p. 186-188
    発行日: 1982/06/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
  • 鵜飼 保雄
    1982 年 32 巻 2 号 p. 188-193
    発行日: 1982/06/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
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