日本造血・免疫細胞療法学会雑誌
Online ISSN : 2436-455X
総説
造血細胞移植におけるHLA研究の新展開
森島 聡子
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2024 年 13 巻 3 号 p. 89-95

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抄録

 同種造血幹細胞移植(allo-HSCT)における患者とドナーのHLAの意義については,主に患者とドナーの臨床データとHLAデータが大規模に整備された非血縁者間造血幹細胞移植(UR-HSCT)を主体に解析されてきた。次世代シーケンサーの登場によってHLA遺伝子全領域の多型情報が得られるようになり,従来のタイピング法では解明されなかった新たな知見が報告されている。HLA-Bのexon 1の-21に位置する二多型によって生じるHLA-Bのリーダー配列の違いや個体が保有するHLA-DQA1と-DQB1遺伝子の組み合わせにより生じるHLA-DQヘテロダイマーの違いが移植転帰に影響する可能性が報告されている。移植後に大量cyclophosphamideを用いる血縁者間HLA半合致移植や臍帯血移植など代替ドナーによる移植が広く行われるようになったが,HLAの意義は移植ソースによって異なり,UR-HSCTで得られている知見を当てはめることはできないことも示されている。本稿では,造血細胞移植におけるHLAの意義について,近年明らかにされてきた新たな知見を中心に概説する。

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© 2024 一般社団法人日本造血・免疫細胞療法学会
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