育種学雑誌
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パンコムギのモノソミックスのEMS処理による突然変異の誘発
木庭 卓人常脇 垣一郎
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1982 年 32 巻 3 号 p. 259-265

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抄録
パンコムギ(Triticum aestivum L.)の特定染色体上の突然変異遺伝子を効率的に選抜するため,その一品種Chinese Springの第1,第5及び第7同祖群染色体のモノソミックス,及び正常系統の自殖種子をO.3%及び0.4%のEMS(ethyl methanesulphonate)で処理した。 M1世代において,mono-1A,1B及び1D系統が正常系統より高い生存率を示した。このことは,1A,1B及び1D染色体がhemizygousな状態のときEMSに対する耐性が増すことを示している。 M2世代において調査した814系統中,33(4.1%)が突然変異形質に関し固定した系統であった。その内訳は,chlorosis及びnecrosis(mono-1A,1B,1D,5A,5B,7A,7Dから12系統),lethal seedling(mono-1B,1Dから3系統),yellow stripe(mono-1Bから1系統),dwarf(mono-1A,1B,1D,5Dから10系統),compactoid(mono-5Aから4系統)及び,sphaerococcoid(mono-7B,7Dから3系統)である。 本実験におけるモノソミック系統の突然変異率は正常系統のそれに比べ有意に高くはたかったが,上記のM2世代で固定した突然変異形質を支配する遺伝子は,Fig.1に示したごとく,M1世代においてhemizygousであった染色体上に座乗するものと推定される。
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