育種学雑誌
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秋子梨(Pyrus ussuriensis MaX.)とイワナヤマナシ(Pyrus aromatica Nakai et Kikuchi)に特有なフラボノイドのナシ属内の分布と,その含有品種の日本における地理的分化
梶浦 一郎中島 政順酒井 雄作大垣 智昭
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1983 年 33 巻 1 号 p. 1-14

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抄録

ニホソナシ栽培品種の起源と地理的分化を明らかにするため,ナシ属の種,東アジア産の栽培品種,日本の野生系統等の葉中に含まれる種特異的たフラボノイドをぺーパークロマトグラフィーにより調査した。中国大陸東北地方と朝鮮半島中北部に産する秋子梨(P.ussuriensis)と日本の東北地方産のイワナヤマナシ(P.aromatica)の野生種及び同種に属する栽培品種に,UV光下で鮮黄色の蛍光を発するフラボノイドが存在した。ところが,このフラボノイドは他の東アジア産ナシ属種,ヨーロッバ,地中海沿岸地方原産種とその栽培品種中には検出されなかった。発色やRf値等より,本フラボノイドはフラボノール・アグリコン(F-Ar)と推定され,前記2種に種特異的なフラボノイドと見なされ,ナシ属化学分類の有効な一指標になると思われた。 本フラボノイドが検出された日本の在来品種の起源は東北地方に,同じく野生系統の起源は関東,中部地方,並びに岩手県にそれぞれ局在Lた。関東,北陸,九州地方の在来品種には本フラボノイドはほとんど検出されず,本フラボノイドの日本における分布はイワナヤマナシの原産地とかなり良く一致した。更に,江戸時代末期から大正時代にかけて発見されたほとんどの品種からは本フラボノイドは検出されず,二十世紀を含む5品種に限って見い出された。

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