育種学雑誌
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Nicotiana tabacum から N.rustica への不完全なゲノムの導入
故雫田 直紀山元 階二中島 哲夫
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1983 年 33 巻 1 号 p. 15-22

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抄録

遠縁交雑により有用遺伝子を栽培種へ導入する場合に,まず雑種を得ることの困難性が問題となる。また,たとえ雑種が得られても,交雑により同時に持ち込まれた好ましくない遺伝子の除去が必要である。これらの問題を同時に解決する一つの方法として,放射線を照射して染色体の断片化をはかった花粉を授粉し,花粉親のゲノムの一部だけを導入した「部分雑種」を,胚珠培養法を利用して作出することが考えられる。本実験では,通・.常の交配では雑種を得ることが困難である Nicotiana rustica × N.tabacum の組合せについて、上述の方法による「部分雑種」作出の可能性を検討した。 N.tabacum の花粉を137Csガンマー線で照射し(5~40kR,2.5kR/min),あらかじめ除雄した N.rustica に授粉した。授粉後6~7日目に.胚珠を剔曲して胚珠培養を行ない,雑種値物を育成した。 照射花粉の人口培地における発芽実験から,発芽ならびに花粉管の伸長には放射線の影響が見られなかった。一方,花粉管内の核の観察から,精核の一染色体の断片化が起っていることが示唆された(Table1)。

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