育種学雑誌
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Nicotiana sylvestris の三染色体植物シリーズの葯培養による二染色体半数体の育成
新関 稔林 浩之斎藤 健一
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1984 年 34 巻 1 号 p. 1-8

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抄録

正常二倍体および半数体に余剰染色体が添加された場合の遺伝子平衡の乱れを比較検討するため,単一ゲノムをNicotiana sylvestris(n=x=12)の三染色体植物およびその葯培養による二染色体半数体の育成を試みた。 3倍体と2倍体の交雑F1に2倍体を戻交雑し,その子孫の中から61個体の三染色体植物を選抜した。得られた三染色体植物は葉形および花器形態によって12型の完全シリーズに分類することが出来た。 葯培養による花粉起源植物の出現頻度は三染色体植物の型の間で大きな変異を示した。このことは余剰染色体の種類が花粉起源植物の出現頻度に大きく影響することを示唆する。葯培養によって二染色体半数体が得られたのは7つの型の三染色体植物からであり,残りの5つの型からは得られなかった。また正常半数体や二染色体半数体の他に多くの倍数体や混数体が得られた。一般に12染色体(n)を持つ正常半数性花粉起源の植物の出現頻度は13(n+1)染色体を持つ花粉起源のものより明らかに高い傾向を示した。しかし2つの型,B220とQ480の三染色体植物からは余剰染色体を持つ植物と持たたい植物がほぼ同頻度で出現した。またこの2つの型では花蕾の早い時期のものからは余剰染色体を持たない植物,遅い時期のものからは余剰染色体を持つ植物が高頻度に出現する傾向であった。これは12本と13本の染色体を持つ花粉が繭内で同調的に発育しないためであることを示唆する。 得られた二染色体半数体のうち生殖生長期に達したのは5型のみであり,その花器は正常半数体とほぼ同じ大きさか,あるいはやや小さく,奇形花も出現した。しかしB220の三染色体植物の花形は正常で2倍体より著しく大きいのに対し,このB220由来の二染色体半数体は著しい奇形を示しごく小さいものであった。このことは同一余剰染色体が2倍体および半数体レベルで遺伝子平衡の乱れの方向カミ大きく異なることを意味している。

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