育種学雑誌
Online ISSN : 2185-291X
Print ISSN : 0536-3683
ISSN-L : 0536-3683
野生イネおよび栽培イネにおける窒素固定能の変異
太田 光輝佐野 芳雄藤井 太朗井出 審也
著者情報
ジャーナル フリー

1984 年 34 巻 1 号 p. 29-35

詳細
抄録

作物の生産力増強に関連して,非マメ科作物における空中窒素の固定能力とその向上が注目されている。イネ科植物の根圏で窒素固定が行われることが報告され,イネについてはその食糧資源としての重要性から,近年活発た研究が行われている。著者等は国立遺伝学研究所に保存する種々のイネの系統について調査を行い,これまでに,窒素固定活性は系統こよって大きな差のあること,および根圏における窒素固定菌の存在を明らかにした。さらに交配実験によって,窒素固定能にイネの遺伝子が関与することを示した。 本実験では,野生イネ(10種76系統)と栽培イネ(2種156系)統について,アセチレン還元法によって窒素固定能を測定した。一般に熱帯原産の栽培イネは,野生イネにくらべて高い窒素固定活性を示した。栽培イネの中では,日本の栽培品種は,熱帯原産のものより窒素固定活性が低かった。 個体当りのアセチレン還元活性(ARA)は,根重および乾板重当りのARAとの間に高い正の相関があり,個体の窒素固定能には,根の量と,根の質の両方が重要な役割をもっていることが示された。

著者関連情報
© 日本育種学会
前の記事 次の記事
feedback
Top