育種学雑誌
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計算機のシミュレーションプログラムにもとづく実選抜指数の評価
斎尾 乾二郎永井 次郎
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1984 年 34 巻 1 号 p. 36-42

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抄録

最適選抜指数を構成している係数は,遺伝分散や遺伝共分散(または遺伝率や遺伝相関)のような遺伝母数のある特定の関数であるが,実際にもちいられる選抜指数つまり実選抜指数は,遺伝母数の真値の代りに,手もとの標本にもとづく推定値が,あるいは,以前からの経験等にもとづく推最値をもとにして構成したものである。こうした実選抜指数をもちいて選抜をおこたったとき,最適選抜指数による結果にくらべてどのようなちがいがでてくるかを問題にして,半きょだいデータをもとにした,計算機によるモンテカルロ・シミュレーションのための計算機プログラムを作製した。ここにおける選抜指数は,選抜の手段としてもちいる形質(つまり選抜対象個体あるいは集団について観測値のある形質)群が目的形質群の一都または全部を含んでいないよう次場合を許す一般化をおこたっている。そして,実選抜指数の評価のための基準について論じ,プログラムにおいてはいくつか考えられる基準すべてに関係した出力がえられる。それら基準の中でもいろいろな意味で適当た評価基準は,最適選抜指数の選抜反応に対する実選抜指数の反応の比としてここに定義した相対選抜反応(relative response to selection,この用語は他の意味でも使われることがあるので注意を要する)であると考えられる。したがって,必要な遺伝母数を推定値でおきかえた実選抜指数の場合には,この相対選抜反応の期待値がまさに最適な評価基準になり,このテーラー展開理論にもとづく近似値(近似値といえども非常に複雑な計算を必要とする)も出力できる。そのほかの出力としては,各反復に.おける,遺伝率,遺伝相関,遺抜指数の係数,指数のスコア,雄親の真の育種価と指数のスコアとの相関等があり,またそれらすべてについて,その頻度分布表およびその分布の平均分散等の出力がある。つまり,このプログラムは,遺伝率,遺伝相関等の基礎的遺伝母数の真値や,育種目標にたいするウエイト等との関連において,雄親や雌親の数の効果や,遺伝母数の推定値と推量値の用い方の効果等を評価するために,用いられるはずであるが,研究的にも教育的にもその他のいろいろの効用が考えられるので,プログラム使用者のために,このプログラムの簡単なフロウと出力の詳細がのべてある。

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