育種学雑誌
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ダイズ(Glycin max MERILL)と近縁野生種(G.tomentella HAYATA)の亜属間交雑における雑種胚形成
酒井 隆子海妻 矩彦
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1985 年 35 巻 4 号 p. 363-374

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抄録
ダイズ属植物の種分化およびダイズの種間交雑育種に関する研究に資する目的で,ダイズを母としG.tomentellaを父とするダイズ属亜属間交雑を試み,雑種胚が形成されるか否かを確認しようとした. 1980年から1982年にかけて合計2306花について交雑を行なった結果,58花のみが交配後10日以上母植物上で生育し,若葉の伸長ならびに不完全種子の発達を示した.この10日を交雑成功の基準にとれば成功率は2.5%であった. 一方,走査型電子顕微鏡で花粉の形態をしらべたところ,G.tomentellaは外膜の網目構造,発芽孔の形に特徴がありダイズのそれと容易に区別がついた.それを手がかりとしてダイズの柱頭上でG.tomentellaの花粉が発芽していることが確認された。また,アニリン青による花粉管の蛍光染色を蛍光顕微鏡でしらべ,G.tomentellaの花粉管がダイズの花柱内を伸長し胚珠に到達していることも確認された.さらにダイズ(2n=40)×G.tomentella(2n=80)に由来する未熟胚をとり,なすりつけ法で染色体数を調べたところ,ある1つの胚で2nの異数体の存在が確認された.雑種胚および自殖胚に由来するカルスを用いてパーオキシターゼのザイモグラムを比較したところ,雑種胚カルス特有のパターンの存在が認められた.
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