育種学雑誌
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35 巻, 4 号
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  • 酒井 隆子, 海妻 矩彦
    1985 年 35 巻 4 号 p. 363-374
    発行日: 1985/12/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    ダイズ属植物の種分化およびダイズの種間交雑育種に関する研究に資する目的で,ダイズを母としG.tomentellaを父とするダイズ属亜属間交雑を試み,雑種胚が形成されるか否かを確認しようとした. 1980年から1982年にかけて合計2306花について交雑を行なった結果,58花のみが交配後10日以上母植物上で生育し,若葉の伸長ならびに不完全種子の発達を示した.この10日を交雑成功の基準にとれば成功率は2.5%であった. 一方,走査型電子顕微鏡で花粉の形態をしらべたところ,G.tomentellaは外膜の網目構造,発芽孔の形に特徴がありダイズのそれと容易に区別がついた.それを手がかりとしてダイズの柱頭上でG.tomentellaの花粉が発芽していることが確認された。また,アニリン青による花粉管の蛍光染色を蛍光顕微鏡でしらべ,G.tomentellaの花粉管がダイズの花柱内を伸長し胚珠に到達していることも確認された.さらにダイズ(2n=40)×G.tomentella(2n=80)に由来する未熟胚をとり,なすりつけ法で染色体数を調べたところ,ある1つの胚で2nの異数体の存在が確認された.雑種胚および自殖胚に由来するカルスを用いてパーオキシターゼのザイモグラムを比較したところ,雑種胚カルス特有のパターンの存在が認められた.
  • 保坂 和良, 松林 元一, 上島 脩志
    1985 年 35 巻 4 号 p. 375-382
    発行日: 1985/12/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    バレイショ近縁野生種2種について,まず,パーオキシダーゼアイソザイムパターンに及ぼす種々の組織による差異,及び植物体の生育環境による差異を明らかにした。次に,各アイソザイムバンドの発現程度に基づいて得られた種間差異を表わす推定値の有効性,及び分析材料としての葉の有効性について検討した. メキシコ原産二階種Solanum pinnatisectum及び南米原産二倍種S.multidissectumを3つの異なる環境条件下(A,12,500luxで12時間日長,昼温23℃,夜温14℃;B,秋期の自然日長で温度条件はAと同じ;C,ガラス室で秋作普通栽培)で栽培し十分生育した植物体から個体毎に,種々の組織から試料を抽出した.平板型ポリアクリルアミドゲルを用いた不連続緩衝液系電気泳動法により,パーオキシダーゼアイソザイムを分離・染色し,そのバンドの有無及び濃度を肉眼によって6段階に分け,異種環境及び組織間で比較した.さらに,種間差異を量的に推定するため,塊茎と葉を用いた場合のそれぞれについて,各バンドの発現程度を形質値として,供試全個体間でユークリッド距離を求めた.
  • 高橋 成人, 三吉 一光
    1985 年 35 巻 4 号 p. 383-389
    発行日: 1985/12/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    普通,種子の胚は,包被組織(種皮・果皮ときには果肉)によって包まれており,ほかの植物組織のように通気系をもっていないため,空気中の酸素と接触することが困難である. このため多くの種子は,発芽するときに気中よりも,より高い酸素分圧を要求することが多い.とくに休眠状態にある種子では,高酸素分圧による休眠打破の効果が認められている.たとえば野生のエンバク,オオムギあるいはイネなどをはじめイネ科植物の休眠種子は,高い酸素分圧の下で発芽が誘導されることが知られている. 一方,多くの水生植物では,逆に低酸素分圧で発芽が促進され,種によっては酸素分圧を高めることによって,発芽力を失なうことも報告されている.一年生のマコモ(所謂アメリカ野生稲,Zizania aquatica L.)などはその代表とされている. イネの休眠種子は,一般に酸素分圧を高めることによって発芽が誘導されるものと考えられてきた.E.H.Roberts(1961)は,一連の実験を行なうことによってこの事実を強調した.しかし,著者ら(1957)は,酸素欠乏下でイネの休眠が打破されうることを実証し,Robertsの説との間に矛盾が存在していることを指摘してきた.このことに関連し,TAKAHASHI(1985)は,日本イネの種子について,酸素分圧を高めることによって,発芽が阻害される事実のあることを予報した.本報はこれらの不明瞭な問題点を明らかにするため,前報にひきつづきより詳細た実一験を試みた結果を取り纏めたものである.
  • 有賀 小海, 中島哲夫
    1985 年 35 巻 4 号 p. 390-397
    発行日: 1985/12/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    タバコは,無機塩と蔗糖のみの単純な培地における葯培養で,花粉から不定胚発生を経て多数の半数体植物が得られる.従って,花粉からの不定胚発生の進行に必要な要因は,培養葯から与えられると考えられており,培養葯の働きの重要性は,多くの研究者によって指摘されてきた.しかしながら,その働きの具体的な内容は明らかにされていない.本研究においては,タバコの花粉からの不定胚発生に対する培養葯の働きを解明することを目的に,葯組織の形態的変化と澱粉顆粒の消長を観察し,また,葯に含まれる可溶態糖および遊離アミノ酸を分析,調査した. 植物体上で発育する葯においては,発育に従って葯の隔壁柔組織が崩壊し,花粉が成熟する花粉体細胞分裂後3日目には,完全に消失するのが認められた(Fig.1 a,d,e).また,花粉体細胞分裂期の葯組織には多数の澱粉穎粒が存在し(Fig.1 b,c),花粉に澱粉が蓄積する時期(花粉体細胞分裂後2日目)にそれらは消失した.一方,花粉体細胞分裂期の葯をNITSCH(1972)の寒天培地に置床し,27℃で培養を行なうと,植物体上の葯に比べて時間的には遅いがやはり,葯の隔壁柔組織の崩壊が観察された(Fig・2 a,d,e).葯組織に含まれる澱粉穎粒は置床後ただちに消失し(Fig.2 b,c),その後再び出現することはなかった.
  • 常脇 恒一郎, P.SPETSOV , 米澤 勝衛
    1985 年 35 巻 4 号 p. 398-412
    発行日: 1985/12/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    コムギ・エギロプス両属には大きな細胞質の遺伝的変異が存在している.この細胞質変異をパンコムギ育種に利用するためにこれまでたされてきた試みとしては,(1)異種細胞質によって誘発される細胞質雄性不稔の雑種コムギ育種への利用,及び(2)異種細胞質とパンコムギ核の相互作用に起因する核細胞質ヘテローシスのパンコムギ育種への利用,の2つが挙げられる.本研究は,異種細胞質のパンコムギ育種への利用の第3の方策として,個々の異種細胞質に適合した核遺伝子型をパンコムギ品種間雑種の後代において選抜し,これを通して実用的に既存パンコムギ品種に勝る系統を育成できる可能性があるかどうかを検討することを目的とするものである.本論文はこの研究の第1報であり,日本の2パンコムギ品種,農林26号と農林61号の交雑組合せについて,(1)親系統の諸形質及び個体間変異,(2)F1世代におけるヘテローシスと個体間変異,(3)F2世代の諸形質とその変異性,及び(4)重要実用形質の広義の遺伝率,の4点に対し,不稔性を誘発しない5異種細胞質がどのような影響を与えるかを研究したものである.
  • 喜多村 啓介, 熊谷 享, 菊池 彰夫
    1985 年 35 巻 4 号 p. 413-420
    発行日: 1985/12/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    ダイズ種子は,不飽和脂質を酸化し,青臭い不快臭を発生する酵素,リポキシゲテーゼを特に多く含有しており,このことがダイズの食品素材としての最大の問題点となっている.これまで,本酵素による不快臭発生を防止するため,種々の試みがなされて来た.現在,食品工業的には主として加熱処理で不快臭発生を防止する方法がとられている.しかし,加熱処理は同時に蛋白質の変性不溶化を招くため,重要な食品加工上の特性であるダイズ蛋白質本来のもつ保水性や粘着性などの低下をもたらす原因となっている.従って現在でも,本酵素作用はダイズを食品素材として有効に利用する上での最大の問題となっている. ダイズ種子中には性質を異にする3種類のリポキシゲナーゼ(L-1,L-2,L-3)が存在する.1981年から1983年にかけて,L-1欠失,L-3欠失,L-2欠失,各変異体ダイズが相続いて発見され,さらにこれら各欠失特性カミ遺缶的支配であることが明らかにされたことにより,ダイズ種子中の本酵素活性を遺伝的にコントロールすることが可能となった. 本研究は,L-2欠失特性の遺伝様式およびL-1,L-2,L-3各酵素欠失特性の遺伝的関係を明らかにすることを目的としたものである.
  • 丹羽 勝
    1985 年 35 巻 4 号 p. 421-428
    発行日: 1985/12/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    南米低緯度地方に栽培されるダイズ5品種と,日本の2品種を用いて,異なる日長条件下,または異たる播種日で栽培し,開花迄日数と主茎節数の変化を観察し,低緯度地方品種と日本品種の日長反応性を比較した. 第一複葉展開時から植物を12時間,12時間40分,13時間20分,14時間の各日長で処理したところ,開花迄日数および主茎節数は日長時間とともに指数関数的に増加した.日長時間に対する指数回帰から,12時間日長における開花迄日数および主茎節数(N12),開花迄日数および節数の日長による増加率(IR)を推定したところ,品種間に差が見られた. 開花迄日数,主茎節数とも,IRの最も大きい品種は日本のアキセンゴク,最も小さい品種は低緯度地方のIAC-8であったが,IRには低緯度地方品種と日本品種との間には,一定の傾向が見られなかった.一方,N12に関しては,開花迄日数および主茎節数とも,日本の品種は低緯度地方品種にくらべて,小さい値を示した. 供試品種のうち,低緯度地方品種3,日本品種2の合計5品種を用いて,5月21日から8月9日にかけて,20日間隔の異なる播種日で,植物を自然日長下,6時より18時までは30℃,18時より6時までは25℃の温度条件で育てたところ,開花迄日数および主茎節数は播種日が遅くなるにつれて減少した.出芽から開花迄の期間の日長時間を平均したところ,平均日長もまた播種日が遅くなるにつれて減少した. 開花迄日数,主茎節数とも,平均日長に対して指数回帰を行なったところ,よく適合した、各品種について,平均日長が14時間のときの開花迄日数,および主茎節数の値(N14)と,それぞれの形質のIRを推定した.開花迄日数,主茎節数ともIRには日本品種と低緯度地方品種の間には差が見られず,N14は日本品種のほうが小さかった。
  • 丸橋 亘, 中島 哲夫
    1985 年 35 巻 4 号 p. 429-437
    発行日: 1985/12/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    Nicotiana tabacum L.× N.rustica L.の通常の交配では,N.rusticaの花粉管がN.tabacumの花柱の途中で伸長を停止するので受精が起らないことが知られている.本研究では,この組合せについて,試験管内受粉法と胚珠培養法を併用することにより,その交雑不和合性を克服し得るか否かについて検討した. あらかじめ除雄,袋かけをしておいたN.tabacumの花を開花当日に採取し,子房を表面殺菌した後,子房壁を除去して胚珠が密生した胎座を裸出させ,これを寒天培地に置床した.また,開花前日のN.rusticaの蕾から裂開前の葯を採取して殺菌し,ペトリ皿の中で開葯させて花粉を得た.試験管内受粉の操作は,寒天培地上に置床したN.tabacumの胎座に対してN.rusticaの花粉を散布する方法で実施した.受粉時の培地は,NITSCH(1972)の無機塩類にMAHESHWARI and LAL(1961)のビタミン類及びグリシン,ショ糖5%(w/v),寒天1.2%(w/v)を加えたものとした. 試験管内受粉後,胎座及び胚珠上で花粉の発芽,花粉管の伸長が認められ,受粉後4時間では500~1000μm程窒の花粉管が観察された(Fig.1A,B).そして受粉後1日たつと花粉管の胚珠への侵入が認められるようになった(Fig.2).本研究では,試験管内受粉時にN.tabacumの子房基部を培地につきさし,2つの胎座の全面に受粉する場合と,胎座を培地に水平に置床する場合(片側の胎座は培地中に埋まり,もう一方の胎座にのみ受粉することになる)の2通りの方法を試みた.後者の方法によると切残された子房壁が培地浸潤液の胚珠及び胎座表面への上昇を防ぎ,多くの花粉管が胚珠へ侵入することが明らかとなった(Table4)ので,以後この方法を採用することにした.
  • 東 正昭, 斉藤 滋
    1985 年 35 巻 4 号 p. 438-448
    発行日: 1985/12/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    陸稲品種戦捷の葉いもち圃場抵抗性遺伝子の属する連鎖群を同定するため,12の標識遺伝子系統と戦捷を交雑し,F3 系統について葉いもち圃場抵抗性を検定すると共に,標識遺伝子の有無・分離を調べた.葉いもち圃場抵抗性と標識遺伝子座の連鎖が認められたのは,第II連鎖群(d-2,lg,Ph)をはじめ,III(lax),IV(d-6),VIII(la,sp),X(bl-1),XI(bc-1,d-14)の6連鎖群であった.一方,連鎖関係が認められなかったのはI(wx,fs-1,Cl,Ur-1),VI+Ix(gh-1,st-2,ri,nl-1,gl-1),VII・V(Dn-1,I-Bf),xII(Hg)の連鎖群であった.標識遺伝子座付近の連鎖ブロックの抵抗性効果からみて,戦捷の抵抗件の大部分は連鎖関係の認められた6連鎖群のうち,第III連鎖群を除く5連鎖群で説明できる.そして標識遺伝子座付近の連鎖ブロックの抵抗性に関し,相加効果がとくに大きいのは第II連鎖群のlg,Ph座,第XI連鎖群のbl-1,第XI連鎖群のd-14座である。ただし第III連鎖群のlax座付近の連鎖ブロックでは戦捷のもたない抵抗性遺伝子を標識遺伝子系統H-453がもっと推測され,他はすべて戦捷側に抵抗性遺信子(または遺伝子群)があるとみられた.また抵抗性遺伝子(群)は総じて優性効果がないか,抵抗性が部分優性とみられた.
  • 鳥山 欽哉, 日向 康吉
    1985 年 35 巻 4 号 p. 449-452
    発行日: 1985/12/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    イネの幼穂を液体培地中で振盪培養し,葯起源のカルスを得ようとした(Fig.1).カルスは葯から形成され,はじめ穎花内で増殖し,後に穎花を押し開いて培地中に浮遊し,懸濁培養細胞となった(Fig.2,3).この懸濁 培養細胞をカルスの大きさによって分画した後,再分化培地に移植したところ,小さいカルスから多くの緑点と2個体の緑色幼植物が得られた(Tab1e 1,Fig.4).従来の葯培養では,個々の葯を取り出して培養していたが,本実験の方法(穂培養)によれば,これらの煩わしい操作を省略できるだろう.さらに,窒素源としてアミノ酸を含む培地を用いた懸濁培養においては,細かい細胞集塊が得られ,これらからプロトプラストが容易に単離できた.
  • 池橋 宏
    1985 年 35 巻 4 号 p. 453-459
    発行日: 1985/12/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
  • 池橋 宏
    1985 年 35 巻 4 号 p. 460-463
    発行日: 1985/12/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
  • 吉田 智彦
    1985 年 35 巻 4 号 p. 464-468
    発行日: 1985/12/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
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