抄録
葉面積当たりの葉窒素の多い葉を持つ品種,葉窒素量を指標とした場合のDensity-thickness(密度を加味した“厚さ")の大きな品種は乾燥条件に適し,葉面積当たりの葉窒素の少ない葉を持つ品種,単位葉窒素で“薄く"(密度を加味した厚さで薄く)広く葉を展開する品種は湿潤条件に適することが,コムギおよびダイズで指摘されている(SINGH and TSUN0DA,1978;KISHITANI and TSUNODA,1981;1982).同様の傾向が,イネについて本研究で認められた. イネ(Oryza sativa)の4栽培品種,Bluebelle,IR8,Panbiraおよび戦捷を供試Lた.Bluebelleは米国南部の水稲で,イネの原産地の東南アジアの雨季の稲作期の気候に比べた場合,比較的乾燥した大気条件下で作られる.IR8は国際稲研究所で育種された東南アジア向けの水稲で,制御された灌概に適する半矮性の品種である.Panbiraはバングラデシュの在来の水稲である.戦捷は90-100年前に台湾あるいは朝鮮から日本に導入された陸稲である(角田,1975).各品種10鉢(1鉢1個体)をガラス室で育てた.4月末に播種し,'6月始めまで全体湛水した.その後5体への灌水を制限して3週後からは土壌の水張力65cbarを維持するようにし,他の5鉢は引き続き湛水した.6月の最終の週に,主茎の上から2番目の展開葉をニアーシールされたアクリル製葉室に挿入しその光合成速度(P),蒸散速度(Tr),温度(T)を通気と照明を制御して測った.始めの40分は湿った空気(葉室の入口で温度30±1℃,関係爆度63±3%)を,次の40分乾いた空気(30±1℃,23±2%)を通気した。その後葉を切断し,葉面積(LA),葉の水分含量(Wact),乾物量(DM),窒素含量(LN)を測定した.Tr,Tなどから葉のCO2拡散抵抗も推定した.各計測は各品種5個体について行い,図表には平均値を示した.