抄録
培養による大量増殖は木本類植物において重要な増殖法として注目されてきているが,ツバキ属植物においては実生の腋芽を用いた二例が報告されているにすぎず,それらは非常に増殖率が低く,しかも幼植物を育成するまでに長期間培養が必要とされているなどの問題が多い。また,ツバキ属の交雑育種において,交雑種子の不発芽が解決すべき問題としてあげられている. ところで,ツバキ属植物の種子には大きな子葉があり,この子葉は受精後の胚形成過程で形成されるものである.したがって,子葉培養が容易になれば短期間に大量の植物体を得ることが可能となり,その上雑種植物作出も可能となり,ツバキ属植物の大量増殖と交雑育種にとって大きな意義がある.そこで,ヤブツバキとチャの子葉培養について検討を加え,実用的た方法を確立した.