育種学雑誌
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36 巻, 1 号
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  • 阿部 利徳, 蓬原雄三
    1986 年 36 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 1986/03/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    イネ(品種,長番稲)種子を脱穎した後,表面殺菌し,ツャーレ内で無菌発芽させ,5~7日後に伸長した根を切断し,1mg/lの塩酸チアミン,200mg/lのミオイノシトール,2mg/lの2,4-D,2g/lのカザミノ酸および3%の蔗糖をふくむMSの寒天培地に置床し,カルスを形成させ,約2ヶ月間培養した後,カルスを液体培地に移し,懸濁培養した.液体培地の組成は上記のカルス誘導培地とほぼ同様であるが,カザミノ酸を1g/l,蔗糖を2%と変更したものである.培養には25mlの液体培地を入れた100mlの三角フラスコを用い,約15日毎にPached Call Volumeで1~2mlをピペットまたはピンセットで新しい培地に移し,継代培養した.またこれらは26℃,弱光下で振盪(80rpm)した. 懸濁培養の遊離細胞集団は,液胞化して分裂能力を持たない細胞と細胞質で満たされた分裂活性の高い細胞,およびそれらの分裂の結果としての10~20細胞よりなる。ell clusterや直径が1mm以上の細胞塊たどにより構成されており,培養が進むにしたがって遊麟の単細胞よりも細胞塊の割合が大にたった。また特に低濃度の2,4-D(1mg/l)の場合に,懸濁培養開始後,約1ケ月後の細胞集団中に,Proembryoid様の形態のものが観察された(Fig.4).
  • 村井 正之, 木下 俊郎
    1986 年 36 巻 1 号 p. 7-15
    発行日: 1986/03/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    種々の草型を有する北海道の5品種を用いて,片面交雑のF1によるダイアレル分析(HAYAMA 1954ab,JONES 1965)を行った.1株穂数,1穂穎花数,平均1茎わら量および稈長においては,相加的分散(a)が優性分散(b)より顕著に大きかった(Table2).1株穂重,百粒重および籾長では,b項の分散が比較的大きかった(Table2). Wr,Vrおよびyr(親品種の実測値)を用いた解析より,しおかりは,完全劣性に近い短籾長遺伝子または遺伝子群を有すると推定された(Fig.1-(1)).
  • 江川 宜伸, 田中 正武
    1986 年 36 巻 1 号 p. 16-21
    発行日: 1986/03/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    トウガラシ(Capsicum 属, 2n=24)は,新世界に起原した植物で,4種の栽培種を含み,かつその各々に近縁野生種が存在することが知られている。トウガラシの種内,種間の類縁関係及び起原に関しては,交雑可能度,比較形態学,雑種の花粉稔性,核型分析,電気泳動によるアイソザイム分析等の観点から多くの研究者により論じられてきた.しかし,雑種の減数分裂における染色体の行動は,殆んど報告されておらず,トウガラシ各種の種内及び種間のゲノムの相互関係を明らかにするには,この方面の研究からのデータは非常に不足している. 本研究では,C.annuumとC.baccatumのゲノムの類縁関係を調べるために,種間雑種の花粉母細胞の減数分裂第一中期における染色体対合を観察した(Fig.1~3)・その結果,9II+1VI,8II+2IV及び7II+1IV+1VIの対合が細胞学的に調査した花粉母細胞のそれぞれ34.0%,13.1%及び15.1%に見い出された(Table 1).染色体対合の平均頻度は,0.02I+8・93II+0・08III十0.72IV+0.02V+0.49VIであった(Table 2).C.annuumとC.baccatumは,3つの相互転座により異なることが証明された・また,1価染色体の出現頻度は,平均で細胞当り0.02と極めて低く,C.annuumとC.baccatumのもつゲノムは,基本的には相同であると結論された.
  • 角田 重三郎, SINGH M.K.
    1986 年 36 巻 1 号 p. 22-30
    発行日: 1986/03/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    葉面積当たりの葉窒素の多い葉を持つ品種,葉窒素量を指標とした場合のDensity-thickness(密度を加味した“厚さ")の大きな品種は乾燥条件に適し,葉面積当たりの葉窒素の少ない葉を持つ品種,単位葉窒素で“薄く"(密度を加味した厚さで薄く)広く葉を展開する品種は湿潤条件に適することが,コムギおよびダイズで指摘されている(SINGH and TSUN0DA,1978;KISHITANI and TSUNODA,1981;1982).同様の傾向が,イネについて本研究で認められた. イネ(Oryza sativa)の4栽培品種,Bluebelle,IR8,Panbiraおよび戦捷を供試Lた.Bluebelleは米国南部の水稲で,イネの原産地の東南アジアの雨季の稲作期の気候に比べた場合,比較的乾燥した大気条件下で作られる.IR8は国際稲研究所で育種された東南アジア向けの水稲で,制御された灌概に適する半矮性の品種である.Panbiraはバングラデシュの在来の水稲である.戦捷は90-100年前に台湾あるいは朝鮮から日本に導入された陸稲である(角田,1975).各品種10鉢(1鉢1個体)をガラス室で育てた.4月末に播種し,'6月始めまで全体湛水した.その後5体への灌水を制限して3週後からは土壌の水張力65cbarを維持するようにし,他の5鉢は引き続き湛水した.6月の最終の週に,主茎の上から2番目の展開葉をニアーシールされたアクリル製葉室に挿入しその光合成速度(P),蒸散速度(Tr),温度(T)を通気と照明を制御して測った.始めの40分は湿った空気(葉室の入口で温度30±1℃,関係爆度63±3%)を,次の40分乾いた空気(30±1℃,23±2%)を通気した。その後葉を切断し,葉面積(LA),葉の水分含量(Wact),乾物量(DM),窒素含量(LN)を測定した.Tr,Tなどから葉のCO2拡散抵抗も推定した.各計測は各品種5個体について行い,図表には平均値を示した.
  • 加藤 美知代
    1986 年 36 巻 1 号 p. 31-38
    発行日: 1986/03/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    培養による大量増殖は木本類植物において重要な増殖法として注目されてきているが,ツバキ属植物においては実生の腋芽を用いた二例が報告されているにすぎず,それらは非常に増殖率が低く,しかも幼植物を育成するまでに長期間培養が必要とされているなどの問題が多い。また,ツバキ属の交雑育種において,交雑種子の不発芽が解決すべき問題としてあげられている. ところで,ツバキ属植物の種子には大きな子葉があり,この子葉は受精後の胚形成過程で形成されるものである.したがって,子葉培養が容易になれば短期間に大量の植物体を得ることが可能となり,その上雑種植物作出も可能となり,ツバキ属植物の大量増殖と交雑育種にとって大きな意義がある.そこで,ヤブツバキとチャの子葉培養について検討を加え,実用的た方法を確立した.
  • 神代 隆, 久保 友明
    1986 年 36 巻 1 号 p. 39-48
    発行日: 1986/03/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    細胞質提供種のプロトプラストにX線を照射したあと,核提供種と細胞融合を行う方法を効率的な雄性不稔性系統の作成法として検討した. 細胞質提供種のN.debneyiから葉肉プロトプラストを単離した直後に,5,10および15kRのX線を照射した.10kR以上の線最では細胞塊の形成は完全に阻害されたので(Table1),10kRをN.debneyiの核機能の不活化に要する線量とした. 10kRのX線を照射したN.debneyiのプロトプラストと無照射のN.tabacum cv. Consolation 402のプロトプラストとをポリエチレングリコールを用いて融合させ,出現したコロニーを無選抜でランダムに再分化条件に移した.大部分の再生植物はConsolation402と同様の葉色,形態を示したが,その中の数個体は雄性不稔性を有した.このようにして得られた雄性不稔性個体は花の形態に関する変異を示しており,それらは大きく4タイプに分類できた(Table2,Fig.1)。この中で,タイプNは正帝なタバコの花と同様の形態を示すが,開花後も繭の裂開は認められたかった・また,タイプCは戻し交配によりN.debneyiの細胞質をタバコに導入した時に得られる雄性不稔性個体と同様の花の形態を示し,花粉粒を有したかった.タイプAおよびBはNとCの中問の形質を示した.再生個体中の雄一性不稔性個体の出現頻度は318個体中30個体であった(Table3).たお,雄性不稔性個体の体細胞染色体数はすべて正常なタバコと同様に2n=48であった.
  • 稲垣 正典
    1986 年 36 巻 1 号 p. 49-53
    発行日: 1986/03/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    培養中の組織細胞から変異体を効率よく得るためには,材料として再分化能力の高い半数性組織細胞の利用が有効である.そこでオオムギ野生種Hordeum bulbosum L.との属間交雑によって得たコムギ品種農林61号の半数性幼胚を用いて,カルスの誘導および植物体の再分化を試みた.カルス誘導用には2,4-ジクロルフェノキシ酢酸2ppmを添加したB5培地を,再分化用にはB5培地のみを使用した.9個の半数性幼胚(約0.5mm長)を15週間培養し,約15mm径のカルスに発育させた.カルスは白色柔軟,黄色徴密および緑色斑点の部分から成り,用いた幼胚によってカルスの形状は異なった.9個のカルスを各六10個のカルス小塊に分割し再分化用培地に移植した。その結果,各六の幼胚に由来するカルス間で植物体再分化率に差異がみられたが,合計63個の植物体を得た.再分化植物は正常に発育し,すべて21本の染色体をもつ半数体であった.本実験では,幼胚を構成する器官を分割して培養量ず,幼胚全体を置床してカルス誘導に供試したので,各六の幼胚に由来するカルス間で,その形状に差異が見られ,これが植物体再分化率に影響した原因のひとつと考えられた。また再分化した植物体の染色体数に変異が認められなかったのは,半数性細胞における染色体異常が再分化にとって致死的であり,したがって安定した染色体数をもつ半数体が再分化したことによると推察された. 以上のことからコムギの半数性幼胚を材料としてカルスを誘導し,さらに半数性の植物体を多数再分化させることができた・今後,半数体倍加系統を作出して組織培餐中の半数性体細胞の遺伝的変異の有無を明らかにする必要がある.
  • 三浦 秀穂, 島本 義也, 津田 周彌
    1986 年 36 巻 1 号 p. 54-66
    発行日: 1986/03/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    ルスチカタバコのダイアレルF1を供試し,異なる環境条件下で草丈とその個体間変異に対する遺伝的効果たらびに遺伝的相互関連を検討した.草丈とその個体間変異には,ともに遺伝子型効果,環境効果および遺伝子型と環境との相互作用効果があったこれら遺伝子型と環境との相互作用効果は,ともに親系統の平均値を環境指標とする回帰モデルに適合し,環境変化に対する反応性を,回帰係数βilと回帰からの残差分散δil2で評価できた.草丈のβilには遺伝子の相加的効果と優性効果が作用L,環境変化に対し反応性が小さい方向に優性であった.δil2は相加的効果が大きく,優性効果はなかった.個体問変異のβ乞三には遺伝子の相加的効果と優性効果に加え,正逆効果があった、βilを支配する遺伝子は小さい方向に優性を示し,F1の個体間変異を環境間で一定にする作用があった.δil2に対する遺伝的効果は,草丈のそれと同様であった.これらパラメータ間の相互関係から,発育不安定性と環境変化に対する表現型可変性は,異なった遺伝的支配を受けると推察された.環境変化に対する反応性(βil,δil2)は,草丈とその個体間変異の問で正の相関関係があり,両名の表現型可変性は共通の遺伝的支配があることが示唆された.個体間変異の大きさに対する遺伝子型効果は親系統とF1の間で差がなく,異型接合体のF1が発育的に安定しているとは言えなかった.草丈とその個体間変異の環境変化に対する反応性は,ともに親系統で高く,F1で低かった.しかし,これらはF1の異型接合性によるのではなく,表現型可変性を支配する遺伝子の相加的効果と優性効果によると考えられた.
  • 南 晴文, 生井 兵治
    1986 年 36 巻 1 号 p. 67-74
    発行日: 1986/03/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    ソバにおける秋型品種から夏型品種への生態型分化の過程を明らかにするために,栽培期の日長および温度条件に対する開花特性や種子生産性の集団内変異を調べ,九州在来の秋型品種には開花期に関し潜在的な遺伝変異があることを明らかにした.本実験では,まず九州在来の秋型品種および北海道・東北在来の夏型品種をそれぞれ2品種供試し,各生態型の開花特性および種子生産性など生態的特性を長日・高温の夏栽培と短日・温暖な秋栽培下において調べた.各品種において,集団内の50%の個体の第一花が開花に至るまでの播種後日数(50%開花まで日数)は,夏・秋雨栽培とも夏型品種が秋型品種に較べて短かった.集団内の第一花開花まで日数の変異幅は,夏型品種の夏・秋雨栽培と秋型品種の秋栽培では約2週間であった。しかし,秋型品種を夏栽培すると3週間以上になった.一株稔実粒数は秋栽培では両生態型とも70~80粒前後であったが,夏栽培の夏型品種では33~34粒,秋型船種では10~11粒ととくに少なくなった。さらに,秋型品種については夏・秋雨栽培下において開花期に関し早咲きおよび遅咲き個体を選抜し,次代集団の開花特性および種子生産作11を較べることによって品種集団内の遺伝変異を調べた.選抜効果は夏栽培における選抜が高く,50%開花まで日数は早咲き選抜集団では播種後39.6日,遅咲き選抜集団では44.0日であった.一株稔実粒数は早咲き選抜集団では12.9粒,遅咲き選抜集団では2.6粒,原集団では4.0粒であった.以上の結果に基づき,九州在来の秋型品種は開花期に関し幅広い遺伝変異を保有し,その遺伝変異は長日・高温の夏栽培を行うことによって強く発現し,夏栽培下での早咲き個体の選抜によって早生化し種子生産性も向上することが明らかになった.したがって,九州在来の秋型品種は,長日・高温下において早咲き個体の選抜を繰り返すことによって夏型的特性を持つ集団へ分化することが示唆された.
  • 新関 稔, 田中 満, 斎藤健一
    1986 年 36 巻 1 号 p. 75-79
    発行日: 1986/03/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    プロトプラスト融合技術を用い,ダイズの核にイネとダイズの両葉緑体を持つ褐色の雑種カルスを得,さらにこの雑種カルスからダイズあるいはイネの葉緑体のみを持つ,それぞれ緑色あるいは白色カルスを分離した(NIIZEKIら1985).約4ヵ月後これらのカルスおよびその両親のカルスを用いてストレプトマイシンヘの反応を調査した.両親のカルスは光条件下では耐陛を示し,暗黒条件下では感受性であったが,イネとダイズの両葉緑体を持つ雑種カルスは光および暗黒条件下で共にストレプトマイシンに対し極度の感受性を示した.しかし緑色および白色の分離カルスは両親と同様光条件下では耐性を示し,暗黒条件下では感受性であった.このように両親および分離カルスのストレプトマイシンヘの反応が光および暗黒条件で異なることからカルスのストレプトマイシンに対する反応は光合成機能を持つ葉緑体と関係する可能性が考えられる.またダイズあるいはイネの葉緑体を単独に持つ緑色および白色の分離カルスが耐生を回復することからも葉緑体がストレプトマイシンに対する反応に関係していることが推察される.しかしストレプトマイシンに対する反応が他の細胞器官に依存している可能性もこの研究では否定できなかった.また両葉緑体を持つ雑種カルスが光および暗黒の両条件で感受性となる原因についてもこの研究では不明である.一年の長期培養後,両葉緑体を持つ雑種カルスを細分し,光条件下でストレプトマイシンに一対する反応を調査したところ,4ヵ月目に比較してより高度の耐性カルスが多く出現した.この耐性カルスの出現は前述の緑色および白色の分離カルスのように,どちらか一方の親の葉緑体が消失し,片親のみの葉緑体どたり耐性を獲得したカルス部分あるいは細胞が増加したためと考えられる.
  • 関塚 清蔵
    1986 年 36 巻 1 号 p. 80-83
    発行日: 1986/03/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
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