抄録
イネ第7染色体に座乗する早生遺伝子がこれまでに見出されている(佐藤・新城1983)。この早生遺伝子と蔡岡(1968)が報告した早生遺伝子Ef1bとの関係を調べるとともに,この早生遺伝子の染色体上の位置を決めることを目的として,相互転座系統T3-7とRT7-11ならびに標識遺伝子系統HO775を早生遺伝子の供与親とし,台中65号を反復親とする9ないし10回の連続戻し交雑により,早生の同質遺伝子系統T65・ER-1,T65・ER-5およびT65・ER-6を育成した。T3-7は北海道の在来イネ品種である黒色稲-2をガンマー線処理して作出された系統であり(佐藤ら1975),RT7-11は長崎の原爆被曝イネから見い出された系統である(岩田1970).また,H0775は第7染色体に座乗する淡緑色葉遺伝子pglを持つ標識遺伝子系統である.なお,B5F1までの初期世代では出穂期と転座点あるいはpglとの連鎖を利用することにより,第7染色体の早生還缶子を確実に選抜した. 出穂期の遺伝分析の結果,上記の3早生系統はいずれも第7染色体に属する1対の完全優性の早生遺伝子をもつことを明らかにした.これら3系統ならびにTSAI(1976)の育成した北海道在来のイネ品種である坊主5号に由来する早生遺伝子Ef1bを持つ同質遺伝子系統の間で早生遺伝子に関する対立性検定を行なった結果,いずれの早生遺伝子も第7染色体のEf1座に存在し,また類似した作用力を持つ遺伝子であることを明らかにした.