育種学雑誌
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液体回転培養によるショウガの大量増殖
野口 裕司山川 理
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1988 年 38 巻 4 号 p. 437-442

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抄録

ショウガは栄養繁殖性作物であるため増殖率が低く,かつ栄養体伝染性病害に冒されやすい.そこで無毒化株を普及させるために大量増殖の方法を検討した。修正MS培地(HOS0KI and SAGAWA,1987)を基本培地とした生長点の寒天培養では,BA濃度が高くなるにつれて不定芽の数は増加したが,根の発達は抑制された.NAA濃度と芽の数および根の発生との関係は明らかではないが,高濃度区ほど草丈5mm以上の苗条数が減少し奇形根が増加する傾向があった.順化可能な完全な根を持つ苗条数は低濃度のBAを含む培地で多く得られ,BA 1mg/lの単独添加培地で6.3本の植物体が得られた(第1表).寒天培地上で節部を含む茎切片を培養した場合,B5培地よりも修正MS培地のほうが茎葉分化率・発根率の点で優れていた.またNAAおよびBA濃度と茎葉分化率・発根率との間には一定の関係は認められなかったが,修正MS培地にBA3mg/l,NAA5mg/lを添加した培地が最も優れていた(第2表). 修正MS培地を基本培地とした液体培地での茎切片の回転培養では,2,4-Dを加えた場合カルス化もしくは肥大化するのみで苗条の分化または冬芽体の形成は認められなかった.BA濃度が高いほど芽数は多くなり,高濃度のBA区において長さ5mm以下の芽が15個以上の冬芽体形成がみられた(第1図).冬芽体の芽数はBA10mg/l区で平均44.5個,最高61個であった(第3表).冬芽体は個々の芽を切り分け,BA lOmg/lを含む培地中で回転培養することによって継代および増殖することが可能であった。また,個々の芽をBA3mg/lを含む寒天培地に置床することにより植物体にまで再生し,かつその順化も容易であった(第2図).以上の結果から,液体回転培養によって作出される冬芽体はショウガの大量増殖に有効であると考えられた.

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