育種学雑誌
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ヒエ属雑草のすみわけに関与する嫌気種子発芽性
山末 祐二浅井 善治植木 邦和草薙 得一
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1989 年 39 巻 2 号 p. 159-168

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抄録
ヒエ属雑草のすみわけの生理・生化学的機構を解析する研究の第一段階として,その分化の様相をフィールドで確認するため京都府および滋賀県の様々な生育地から約200個体を採集した,合計68のタイヌビエ(E.oryzicola)及びヒメダイヌビエ(E.crus-galli var.formosemsis)の採集品の中で66が水田あるいは休耕田で採集された.ヒメイヌビエ(E.crus-galli var.praticola)は計60のうち56が水田以外の湛水されることのない生育地で採集され,これらは種子(小穂)重が極めて小さかった(Tables1,2).イヌビエ(E.crus-galli var. crus-galli)は特定の生育地を示さず,水田及びそれ以外に広く分布し,形態,出穂期においても幅広い変異を示した. ヒエ属雑草各々1系統を供試して6段階(50,100%F.C.,飽水,5,10,15cm湛水)の土壌水分条件下で種子発芽および実生の生育を調査したところ,タイヌビエ,ヒメダイヌビエの種子発芽及び実生の伸長は15cm湛水でもほとんど影響を受けず良好であ?た.(Figs.1,2,3).また,これらの種子は窒素条件下で嫌気発芽した(Fig.4).ヒメイヌビエは湛水条件下で全く発芽せず,催券種子を播種した場合も実生の伸長は水中で停止した.また,窒素条件下では!.7%の発芽を示したのみであった.イヌビエも湛水あるいは窒素条件下での種子発芽および実生の生育は劣ったが,催券種子を湛水条件下で生育させたとき10cm湛水で辛ろうじて12日後に葉鞘先端が水面に達した. 酸素電極法によって各雑草種子の水中における酸素吸収のVmaxおよびKm値を求めたところ,Vmax値は雑草間で有意差が認められなかったが,ヒメイヌビエのKm値は他と比較して有意に小さかった(Table3).以上の実験結果から,ヒメイヌビエが水田に進入できない第一義的な生理的要因は種子の嫌気発芽不能にあることが示唆された.
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