抄録
ニンジンは雑種種子の採種が難しく,一代雑種(F1)品種の育成が他の主要な野菜に比べて遅れている.日本では1980年代になって初めて,この間に育成されたF1品種数が固定品種の数をしのぐようになった.ソ連では雄性不稔性を用いたヘテローシス育種の研究が活発に進められているにもかかわらず,ニンジンのF1品種はまだ一般栽培されるに至っていない.ニンジンの一代雑種は多収性,草勢,均一性,耐病性等の面で大変有利である.バイオ技術,特に人工種苗など組織培養を用いた新しい技術は雄性不稔性を備えた母親系統の育成とF1採種の効率化に大きな役割を果たすであろう.