抄録
中国のイネ品種倭脚南特が示す半矮性と脱粒易に関する遺伝子分析を行った.実験には,わが国の水稲品種農林29号と,その遺伝的背景に倭脚南特および台中在来1号の半矮性遺伝子をそれぞれ導入した半矮性準同質遺伝子系統SC-AJNTおよびSC-TN1を用いた.SC-AJNTは脱粒易を示したが,農林29号とSC-TN1はともに脱粒難であった.また,SC-TN1は低脚烏尖の半矮性遺伝子sd-1を持つことが明らかにされている系統である. SC-AJNTと農林29号を交雑した結果,矮脚南特の示す半矮性は単一劣性の半矮性遺伝子に支配されることがわかった.次に,SC-AJNTと半矮性遺伝子sdー1を持つSC-TN1とを交雑したところ,その雑種はすべて半矮性を示し,矮脚南特は半矮性遺伝子sd-1を持つことが明らかになった.脱粒性に関しては,SC-AJNTと農林29号,SC-AJNTとSC-TN1の雑種から,SC-AJNTの脱粒易は矮脚南特に由来する単一劣性の脱粒性遺伝子に支配されることが明らかになった.また,SC-AJNTと農林29号の雑種F2,BC1集団における脱粒性と稈長の分離比から,矮脚南特に由来する脱粒性遺伝子は半矮性遺伝子sd-1と13.7±4.6%の組換価で連鎖することがわかった.