育種学雑誌
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トルコ産 Secale cereale L. と S. montanum Guss. におけるB染色体
丹羽 克昌大田 正次阪本 寧男
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1990 年 40 巻 2 号 p. 147-152

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抄録

トルコ東部は最も有力な栽培型ライムギの起源地のひとつと考えられている.従ってこれらの地域におけるライムギ属植物の細胞学的変異を調査することは重要である.にもかかわらずトルコ産のライムギを用いてその細胞学的変異を調査した報告はほとんどない.そこで本実験では多集団のトルコ産Secale cereale L. と S. montanum Guss.を用いてこの地域におけるB染色体を持つ個体の出現頻度とB染色体の細胞遺伝学的特性を調査した. S. cereale に関してはトルコの15集団,合計861個体を細胞学的に観察した.その結果2集団のみにB染色体を持つ6個体が見いだされ,他の集団にはB染色体を持つ個体は見いだされなかった(第1表と第1図).6個体とも2本のB染色体を持っていた.B染色体を含む集団でのB染色体を持つ個体の出現頻度は2.2%(5個体/226個体,系統16)と1.5%(1個体/67個体,系統23)であった.このことからトルコにおいてはB染色体を持つ個体の出現頻度は低いことが明らかになった.この結果はMUNTZING(1950)およびSAKAMOTO and AKITA(1982)の結果とほぼ一致している.本実験で見いだされたB染色体は常染色体とは対合しなかった(第2図aとb).また,不分離を起こし,標準型B染色体である(第2図cとd)と考えられた.この特徴は世界各地のcerealeのB染色体に共通したものであり,cerealeのB染色体が一元的に起源したことを示唆している. 次に, S. montanumに関してはトルコの4集団,合計45個体を細胞学的に観察した.B染色体を帯つ個体は見いだされなかった(第2表).

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