育種学雑誌
Online ISSN : 2185-291X
Print ISSN : 0536-3683
ISSN-L : 0536-3683
シアン耐性呼吸径路阻害剤によるブロッコリーの雄性不稔誘発
岸谷 幸枝今野 昇
著者情報
ジャーナル フリー

1990 年 40 巻 2 号 p. 217-222

詳細
抄録

ミトコンドリアの内膜で起こっているシアン耐性呼吸の阻害剤によつ雄性不稔が誘発された.ブロッコリー(Brassica oleracea L. cv. De Cicco)の花芽分化後の蕾に,主要な阻害剤;SHAM(salicylhydroxamic acid),Propyl gallate, Disulfiram,をそれぞれ,1-10mM,0.1-1mM,0.1-1mMの濃度で7-10日間処理した.処理方法は蕾の下部の茎に糸を通して,吸収させる方法を採った.いずれの阻害剤も適当な濃度で雄性不稔を誘発したが,Disulfiramは花弁が開きにくい等の影響がみられたので,主にSHAMとPropylgallateを用いた.花器を観察すると,正常型と比べて,誘発された不稔花は花弁の大きさが小さくなり,葯の柱頭に対する相対佐渡も低くなるなど,細胞質雄性不稔ブロッコリーとよく似た形態を示した(Figs,1,2).1花当りの総花粉数と稔性花粉の割合(%)はともに大きく低下しており,葯の大きさもやや小さくなり,開花時に菊が裂開しない点でも,対照の細胞質雄性不稔系統と類似していた(Table!). 阻害剤の処理方法として,種子に処理した場合には,約18%の割合で雄性不稔個体が出現した. 阻害剤により誘発された雄性不稔花に正常な花粉を交配したところ,細胞質雄性不稔系統と比較して,種子稔性が0-30%に低下したことから,これら阻害剤は同時に雌ずいにも異常を引き起こしているようである.しかしながら,濃度等の処理条件をさらに検討することによつ,雄性不稔性は維持しつつ,雌ずいへの影響を最低限にとどめる方法が見いだせるかも知れない.

著者関連情報
© 日本育種学会
前の記事 次の記事
feedback
Top