育種学雑誌
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枝豆ダイズと普通ダイズにおける完熟種子の吸水特性の差異
赤澤 経也笹原 健夫
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1990 年 40 巻 3 号 p. 349-359

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抄録
大豆は蛋白質および脂肪資源として重要な作物の一つであるため,収量性,含有成分,耐病性などに関して多くの作物学的・栽培学および育種学的研究がなされてきた.しかし,大豆を未熟状態で食用に供する枝豆についての研究はきわめて少ない.枝豆としての特性は,上述の諸形質とともにとくに香味,甘味,歯ざわりなど食味品質に関する特性が要求される.本研究は,枝豆品種を含む115品種(3品種に3種類の形状の異なる種子が形成されたので6種類を加えたため121品種・種類)の完熟種子を用いてそれらの吸水特性値を測定し,吸水特性値による品種分類を検討したものである. 吸水特性値としては,種皮および子葉の乾重当たり吸水率,種子体積当たり吸水率および砲水率を測定し,さらに完熟種子を52時間にわたって浸漬し,定時的に重量を測定し,各測定時間と対応する吸水種子重の回帰係数(以下,完熟種子の吸水速度と略称)を求めた.これら5つの吸水特性値を用いて判別分析を行った結果,枝豆品種群と普通大豆品種群がかなり判然と2群に分類される結果がえられた.5つの吸水特性値のうち,枝豆品種群は子葉の乾重当たり吸水率が大きく,普通大豆品種群は完熟種子の吸水速度が大きい特徴がみられた.これらの結果は,完熟種子の段階でも枝豆品種群と普通大豆品種群は,種子内において吸水に関与するとみられる含有物質(糖類,アミノ酸類など)の量および種子の組織構造が異なることを示唆している.
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