抄録
ビールオオムギの耐湿性を高める目的で,耐湿性の異なる品種間で交配を行い,雑種F4~F6世代での耐湿性の選抜結果から遺伝率を推定し,耐湿性の選抜をより的確に行うためにはどの形質を用いればよいかの検討を行った.過湿処理は節間伸長期に行い,過湿区の葉枯程度および稈長と子実重の対照区比(過湿区/対照区,以下同じ)を指標形質とした.葉枯程度を指標とした場合,供試した4組み合わせの遺伝率は0.12~O.48であった.選抜次代の上位と下位の系統群の葉枯程度の平均値を比較すると,いずれの組み合わせとも上位の系統群の方が少なく,そのうち3組み合わせで有意差が認められた.稈長および子実重の対照区比を指標とした場合,供試した3組み合わせの遺伝率は前者が0.47,-0.02,1.06および後者が0.32,-0.12,0.23であった.選抜次代の上位と下位の系統群の稗長および子実重の対照区比の平均値を比較すると,前者は2組み合わせで上位の系統群の方が大きく,ともに有意差が認められ,後者は2組み合わせで上位の系統群の方が大きく,そのうち1組み合わせで有意差が認められた. 以上の結果から,ビールオオムギにおける過湿区の葉枯程度は稈長および子実重の対照区比を指標とした場合よりも安定した選抜効果や遺伝率の推定値が得られるので,雑種初期世代における耐湿性を選抜するための有効な指標形質である.