育種学雑誌
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イネ白葉枯病に対する量的抵抗性突然変異体の遺伝分析
中井 弘和桑原 定明千賀 茂政
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1990 年 40 巻 4 号 p. 397-409

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抄録

イネ白葉枯病に感受性の水稲品種晴々を原品種とする,白葉枯病菌系II,III,IVに対して量的抵抗性を,また菌系I,Vに対しては質的抵抗性を示す誘発突然変異体(M57)の遺伝分析を行なった.晴々とM57の交面己F1およびF2実験の結果から,M57の菌糸II,III,IVに対する量的抵抗性はポリジーンあるいは微動遺伝子によって,また,薗系I,Vに対する質的抵抗性は1対の主働遺伝子により支配されていることが明らかにされた.しかしこの質的抵抗性の遺伝子は対立性検定の結果,黄玉群の品種が持つ抵抗性遺伝子Xa-1,Xa-12とそれぞれ類似しており,M1植物養成中の花粉コンタミによることが疑われた.菌系I~Vに量的抵抗性を示したF2個体に由来するF3系統に対する接種試験において,明らかに菌系I~Vのすべてに抵抗性を示す系統がいくらか選抜された.このことから,Mutagen処理によって菌系II,III,IVのみならず菌系I,Vに対しても量的抵抗性を現す突然変異が誘発されたことが示唆された.また,それら選抜されたF3系統のほとんどは,M57の矮性の欠点をもたず,したがってイネの白葉枯病抵抗性育種における貴重な交配材料となると考えられた.

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