育種学雑誌
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日本の二条オオムギ品種と野生オオムギHordeum bulbosum L.との交雑能力の品種間差異
古庄 雅彦浜地 勇次吉田 智彦
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1990 年 40 巻 4 号 p. 411-417

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抄録

栽培二条オオムギの半数体を作るため,日本の二条オオムギ6品種と3組合せのF1を1988年(試験I)に,また二条オオムギ13品種と3組合せのF1を1989年(試験II)に,野生オオムギ(Hordeum bulbosum clone,Cb2920,2n=14)と交雑し,野生オオムギとの交雑能力の品種間差異をみた.全頴化数に対する幼胚着生率および半数体作出率で交雑能力を推定した.二条オオムギ品種の幼胚着生率および半数体作出率は,試験Iにおいてはそれぞれ11.1~59.8%,3.4~29.5%,試験IIにおいてはそれぞれ1.7~72.7%,0.6~26.5%であり,品種間差があった.両試験ともに関東二条25号は他の品種と比較して有意に高い交雑能力を示した(Table 1).F1での幼胚着生率および半数体作出率は,試験Iにおいてはそれぞれ46.6~57.3%,14.1~23.8%,試験IIではそれぞれ34.8~54.8%,12.1~23.9%で,関東二条25号を片親にしたF1はそれを片親に持たないF1よりも有意に高く,その値は関東二条25号に近かった(Table2). 供試した6つのFlはいずれも片親にオオムギうどんこ病抵抗性品種(関東二条25号,吉系15およびニシノチカラ)を持っており,これらのF1から作出した半数体にオオムギうどんこ病菌(レースIX)を接種したところ,抵抗個体と罹病個体に分離した.吉系15およびニシノチカラを片親としたF1から得た半数体では,抵抗個体と罹病個体の分離比が1:1となったが,関東二条25号を片親としたF1から得た半数体では,分離が抵抗性の方へ偏った(Table3).なお,関東二条25号のうどんこ病抵抗性は1個の遺伝子により支配されていた(Table4).

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