育種学雑誌
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コムギ種子貯蔵蛋白質グルテニンの高分子量サブユニットと品質特性
中村 洋佐々木 宏平野 久山下 淳
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1990 年 40 巻 4 号 p. 485-494

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抄録

コムギ(Triticum aestivum L.)の日本および外国品種計376品種について,種子貯蔵蛋白質をドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミトゲル電気泳動法によって分離した.その結果,外国品種には全く見られないグルテニンの高分子量145kDサブユニットが,日本品種に高頻度で認められた.このサブユニットは,電気泳動における移動度から,PAYNE et al.(1983)が報告したグルテニン2.2バンドと同一の蛋白質と推察された.コムギ農林登録131品種(コムギ農林1号~農林131号)では,約1/3の品種がこのサブユニットを有することが明らかとなった.また,グルテニン145kDサブユニットは,硬質・準硬質の品種に全く存在しないこと,中間質・軟質の品種では,高頻度で認められることがわかった.このことからこのサブユニットがコムギの硬軟質性と関連していると考えられた.また,遺伝分析の結果,グルテニン145kDサブユニットは,単一の遺伝子に支配されていることも明らかとなった.北海道・東北・北陸・長野など北日本の育成地で育成された品種の多くにこのサブユニットが存在せず,四国・九州など西日本で育成された品種の約3分の2がこの145kDサブユニットを保有していた.この地理的分布に関連して,九州及び北海道での品種の育成過程を見ると九州育成品種では,145kDサブユニットを持つ品種と持たない品種の交雑の後代において,145kDサブユニットを持つ個体を選抜する場合が多く,逆に北海道育成品種では,このサブユニットを選抜しない傾向が例えた.

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