育種学雑誌
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出穂開花期冷害の発生気象条件下における日本イネの稔実能力維持期問とその品種間差異
細井 徳夫
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1990 年 40 巻 4 号 p. 505-520

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抄録

人工光環境調節装置内で水耕法により養成したイネ品種フジミノリを供試し,出稿始めから標準日射恒温・標準日射変温・弱日射恒温・弱日射変温条件下で完全米比率80%の稔実を維持できる期間(稔実能力維持期間)を求めた.10℃~15℃の温度域での不稔の発生は,日射量の多少,最高・最低および日平均気温の高低よりも冷温期間の長さに強く影響を受け,稔実能力維持期間は6~8日間であった.出穂開花期冷害が発生しない限界温度(稔実下限温度)を異にする15品種を供試し,弱日射6恒温条件で検定したところ,15℃では稔実能力維持期間に0~8日間の品種間差異が認められた.そこで,日本のイネ77品種について弱日射15℃恒温条件での稔実能力維持期間を調査した結果,北海道と東北の品種は4~8日,東海近畿,中国四国および九州の品種は0~4日で,寒冷地品種は暖地品種よりも稔実能力維持期間は長かった.稔笑下眼温度の低い品種は稔実能力維持期間が長い傾向にあるが,必ずしも一致しないので,品種の出穂開花期耐冷性は両特性を考慮して判定する必要がある.

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