抄録
インドネシア在来イネ品種シレワーと北海道品種はやこがねとのF1雑種で極端な種子不稔が見出された.この種子不稔の原因について検討したところ,まず細胞質の影響はなく,またF1雑種の花粉稔性は正常であった.そこで,F1雑種の開花時の菊を観察したところ,不裂開約が多数見出された.これらのことから,F1雑種の種子稔性が低い原因は,多数の菊の不裂開に起因しているのではないかと推察された.そこで,はやこがねとシレワーとのF1雑種と同様にシレワーとのF1雑種が種子不稔を示す品種が他にあるかどうかを明らかにするために,はやこがねの親系統とシレワーとの間で交雑を行った.その結果,農林15号,北斗および共和とのF1雑種が種子不稔を示した.従って,シレワーとのF1雑種で種子不稔を生ずる品種が日本型イネ内に分化していることが示唆された.